|
|
|
|
| 上級編 はじめに 入門編 基礎編 中級編 特別講座編 |
上級編への扉 語感ジャーナル第58号より |
|||||||
| 風薫る五月のさわやかな陽気が心地いいこの頃ですね。 みなさまは、いかがお過ごしでしょうか。 少しの間でしたが、特別講座編「オノマトペ」を配信させていただきました。 からから、くるくる、ころころ、カンカンのK音の体感。 そそくさ、のS音の体感。 ひょっこり、や、はらはら、のH音の体感。 発音体感とオノマトペがまさにそのままだ、ということを実感していただけたのではないでしょうか。 さて、いよいよ来週から語感ジャーナルは上級編に突入することになります。 上級編のテーマは、「拍のものがたり」。今までは、第一音目のK音やH音などといった、 ひとつの音素が醸し出す世界を中心にご紹介してきましたね。 上級編では、ひとつの音素のイメージだけでなく、そのことばを構成するひとつひとつの拍の 発音体感を紐解き、さらにそれらが相互に作用してそのことばの印象が紡がれる「ものがたり」を ご紹介していけたら、と思っています。 さらに、上級編の幕開けを飾るのは、黒川が書き下ろした「拍のものがたり」のコラム。 数回にわたってご提供していきますので、どうぞ、お楽しみに! |
|||||||
上級編 「拍のものがたり 上」 語感ジャーナル第59号より |
|||||||
| 日本語の最小発音単位(ことばの素としてぎりぎりの音声ブロック。 それ以上分解すると、ことばの構成音素としては認められない)は、拍と呼ばれます。 ほぼ、かな一文字に相当します。 たとえば、さくらは、サ、ク、ラの3拍で構成された3拍の語。 さくらんぼは、サ、ク、ラ、ン、ボという5拍の語。 日本語の最小音声単位が「拍」と呼ばれるのは、1音声単位を、同じリズムで発音するからです。 さくらんぼも、あらさがしも、「あいしてる」も、5拍の音は、全部「タタタタタ」という5拍のリズムで 発音します。このおかげで、俳句や和歌が自在に作れるのですね。 拍には、子音+母音の発音体感が作り出す「象(しょう)」があります。 サは、舌の上に息を滑らせて作る、一陣の風。 クは、喉の奥をしっかりと閉じて作る、何かが一点で止まった感じ。 ラは、舌を花びらのかたちにして(舌先を尖らし、側舌を膨らます)、ひらりとひるがえします。 だから、桜は「さっと風が吹き、枝に止まっていた花びらが、 ひらりとひるがえる」ものがたりを感じさせ、この花をさくらと呼ぶ。 私たち日本人は、この花の散り際を愛するのです。卒業や旅立ちの歌に、 桜モチーフが多いのも、季節感だけじゃないはず。 |
|||||||
上級編 「拍のものがたり 中」 語感ジャーナル第60号より |
|||||||
さて、では、サクラちゃんという女の子も、「散り際が潔い感じ」になるのでしょうか? 名前の場合は、 サは、一陣の風が吹くイメージ、転じて爽やかさ、 クは、何かが一点で止まった感じ、転じてしっかり者、 ラは、何かがひらりとひるがえる感じ、転じて華やかさ。 となり、「爽やかでしっかり者の美人さん」という分析になります。 陽動作戦で客に混じるサクラなら、「一陣の風となって(サ)、動かない人々の気持ち(ク)を、 煽る(ラ)イメージ」という分析になるでしょう。 桜も、さくらちゃんも、サクラも、それぞれ、同じ発音体感だし、拍の象(しょう)もほとんど変わらない のに、ものがたりはかなり違う感じがしますね。 それは、ものがたりは、その名で呼ばれるものが何であるかによって違うからです。 言い換えれば、その名で呼ばれる対象物の属性の中から、「風、止まる、ひるがえる」のような 拍の象(しょう)が当てはまるものがたりを探すのが語感分析の大事な作業の一つなのです。 |
|||||||
上級編 「拍のものがたり 下」 語感ジャーナル第61号より |
|||||||
音素の拍が与える「象」は、とてもシンプルです。 口の中で起こる事象なのですものね。 Sは、口の中を吹く、息の風。サは、口腔部を高く上げるア段なので、爽やかな、軽やかな風の イメージになります。開放感も感じさせます。 そこから「風」を引き出すのか、「爽やかさ」を引き出すのか、「軽やかさ」を引き出すのか、 「開放感」を引き出すのか。それは、このサの音で呼ばれるものが何なのかによります。 ラクサは、「ひるがえる、止まる、風」となります。 クラサは、「止まる、ひるがえる、風」です。 どちらも、花のものがたりには置き換えにくいですね。 クラは、内にこもって響く音の並びです。まさに、中にいろんなものを詰め込んだ蔵のイメージ。 これにサがつくと、サが爽やかなので、いっそ、クラの内にこもる感じを増幅します。 同じクラなのに、サが先頭に来て、爽やかさ主体でひっぱるサクラとは、まったく様相を変えてしまうの ですね。 同じ拍を使っても、先に何が来るかで、まったく変わってしまうのが、語感の面白いところ。 でも、人の話もそうですよね。 叱ることと、褒めることが混じる話の場合、褒めることを先にもってくるのか、叱ることを先に もってくるのかで、かなり印象が変わります。 ラクは、「ひるがえる」華やかな動きが先頭に来て、止まるクへ。 ひとしきり動いた後の、休養のイメージになるのでしょうか。まさに「楽」なんでしょうね。 ただ、ラがかなり舌を奔放に翻し、クで完全に止めるので、実際には楽どころか、かなり ダイナミックな感じが出ています。私自身は、「落」のほうが、この発音体感のものがたりには あっているような気がします。 このように、拍並びの発音体感の象(しょう)を、実際のことばとそのことばの指し示すものに 投影して、豊潤に展開していくのが、私たち感性アナリストの仕事です。 ‘ツバキ’が、シャンプーならどうか、アパレルブランドならどうか、そして、お菓子ならどうか。 拍の象(しょう)が、その名で呼ばれるものの属性に、ぴったりと当てはまったとき、 ヒットネーミングは生まれます。 どうにも、ものがたりが語れないとき、その名前はいつまで経っても、市場に根付くことが できないようです。 |
|||||||
上級編 「Inspire the Next がもたらす力」 語感ジャーナル第62号より |
|||||||
日立製作所の”Inspire the Next HITACHI”というフレーズ、ご存知でしょうか。 私はこのフレーズを、TBS系テレビ番組「世界ふしぎ発見!」で何度も耳にしました。 耳にするたびに、まっすぐ未来に向かう光と未知なる世界への扉を感じ、この番組への期待感が 高まり、「ひたち」という高速船に乗っているかのような気分になったのものです。 さて、この”Inspire the Next”はブランドマントラと呼ばれるものです。 ブランドマントラとは、企業イメージを表現するための短文で、キャッチコピーのように直接的かつ 具体的な意味は持たず、スローガンのような強制的な使われ方もしないもの。 ビジネスパートナーの間で意識を統一するために使われたり、CMで、企業名や商品名の後に さりげなく挿入するような使われ方をします。 この意識の質を方向付けるブランドマントラ。 サブリミナルインプレッションの、つまり語感の影響がうかがえるといえますよね。 では、”Inspire the Next”には、どのような印象があるのでしょう。 「イ」は、緊張感と一直線の前向きな力が働く音。追随する「ン」が前へ向かう意識をさらに強めます。 そして「スパイア」で、すずしいまっすぐな息とはじけとぶつばがまっすぐで光に包まれた透明感を 感じさせます。また、「ネ」には遙かな印象があります。 なので、”Inspire the Next”と聞いたとき、私たちは、小さな光の粒が飛んできて心地よくフラッシュする イメージを潜在意識に浮かび上がらせるのですね。 実は、「ヒタチ」の語感も、やさしい閃光を感じさせます。なので、「ヒタチ」と「Inspire the Next」は、 お互いに相乗効果をもちながら、ひとの脳に未来の光のイメージを喚起している、といえるのですね。 少し前にトヨタのCMで流れていた、”Drive your dreams”というブランドマントラも、「ド」「ヴ」と 重厚感のある振動音、「ラ」「リ」の舌の振動音が連なり、胸郭に響く自動車のエンジンを うまく連想させていたように思われます。 ブランドマントラが語感という視点から見ていかに、ひとの潜在意識に影響を及ぼしているか。 ビジネスツールとして、語感の視点を取り入れない手はありませんね。 |
|||||||
上級編 「コカ・コーラとペプシ」 語感ジャーナル第63号より |
|||||||
一見、似たようなブランド名には思えない、「コカ・コーラ」と「ペプシ」。 語感を分析してみると、実は、よく似た印象をもっています。 「コカ・コーラ」のコカコは、KoKaKoと、Kが三つあって、次々と小刻みにK音が現れます。 このK音は、のどのブレークスルー音で、小さな泡がいくつも連なって、弾ける印象をつくります。 一方の「ペプシ」もペプは、PePuで、P音が繰り返されています。 このP音は、唇のブレークスルー音。このため、ペプは、口先で、小さな泡が弾ける印象になります。 さらに、「ペプシ」のシは、舌の上を息が走り抜ける爽やかさと、その湿り気のある息が歯にぶつかって 飛散る、光や水の拡散を感じさせます。 ペプとシを合わせると、たくさんの小さな泡がいっせいに弾ける様子をイメージさせますね。 「コカ・コーラ」は、のどの奥で、「ペプシ」は唇でと、場所の違いはありますが、共に、炭酸が弾ける 印象をもっているのです。 さて、小さな泡が立ち上り続けるドリンクと言えば、シャンパン。 この「シャンパン」の語感も、グラスに注いだシャンパンのビジュアルをそのまま表していますね。 シャンパンのブランドも、ドンぺリ、モエ・シャンドン、クリュッグ、ヴーヴ・クリコ、ポメリーなど、 D、P、V、Kのブレークスルー音や、S音がつかわれています。 シャンパンは、シャンパーニュという地方名が由来なのですが、あの発泡性の飲み物ができる土地 だから、シャンパーニュという地方名になったのか、シャンパーニュというところに住んでいる人だから、 発泡酒がつくりたくなったのか、少し気になりますね。 |
|||||||
上級編 「トマトジュースの3大ブランド考」 語感ジャーナル第64号より |
|||||||
トマトの美味しい季節になりました。丸かじりもいいですが、手軽なトマトジュースはいかがでしょうか? 今回は、何気なくスーパーの棚から手に取っているトマトジュースの語感について紐解いていきます。 トマトジュースには、カゴメ・キリン・デルモンテと3大ブランドがあります。各メーカーの特徴があると 思いますが、みなさんは何を重視して買っていますか? 爽快感・キレ?フレッシュさ?甘さ・コク?辛口・ドライ感?色々あります。語感分析をして各ブランドを 検証していきましょう。 KaGoMe→K音によりドライ感は十分だが、フレッシュ感、キレが不足。 けれど、M音の甘さ・コクにより、よく熟したトマトを連想させ、濃厚なトマトジュースが思い浮かびます。 KiRiN→コクは無いが、透明感のRiが効いてすっきりキレがあり、後味はさっぱり。 しかしキレ・フレッシュ感があってもトマトジュースとしては物足りない感じです。トマトジュースよりは、 ビールやすっきり系の飲み物がピッタリなブランド名といえます。 DeRuMoNTe→コクがあり、フレッシュ感もある。D音の重量感から味というよりは老舗の信頼を 強く感じさせます。まさに高級トマトジュースにはぴったりのブランド名といえます。 このように、カゴメは甘く、キリンはさっぱり、デルモンテはしっかり、という印象が語感分析から表れます。 たとえば、ホテルのダイニングやバーで見かけるトマトジュースはデルモンテが多いですが、 主婦の方がスーパーの棚から手にとるトマトジュースは、カゴメなのです。 トマトジュースを飲もうと想像したときに、前者は重厚感を、後者は甘さ・コクをトマトジュースに 求めてしまうのですね。 つまり、類似商品がスーパーの同じ棚にならぶ分野の商品でどれを最初に手にとるかという選択では、 サブリミナル・インプレッションの影響が思った以上に大きいのです。 一度、トマトジュースだけでなく、ご自分の愛用の品とブランド名の印象を検証してみては いかがでしょうか。案外、潜在脳があなたを操っているのだ、という事実に気づくかもしれません。 |
|||||||
上級編 「気持ち良いことばは語り継がれる」 語感ジャーナル第65号より |
|||||||
| ママ、ムッター、マドレ、メール…。 多くの国で、母親はM音で呼ばれています。 日本語でも母にこそH音が与えられましたが、「飯(まんま、めし)」「実」「蒸す」「芽」「桃」「満ちる」等々、 中身の充足した状態、満ち足りた事態に与えられることばにM音は多いですよね。 なぜなら、人類のすべての個体が、その人生の初めに、温かい腕に抱かれて乳首を口いっぱいに頬張り、 甘い乳を味わった、その人生最大級の快感の現場にhaMという音があったから。 このhaMという音は、乳首に吸いつく際の赤ん坊の発音なのです。 人生最大の快感と、M音に対する人類共通のイメージは、けっして無関係とはいえないようですね。 このM音の気持ち良さで、二千年も残った名前があります。 それは、聖母マリアや、仏陀の母・マヤ。 マリアもマヤも、人々にとって、包み込んでほしい、満ち足りた安心感でいっぱいにしてほしい存在であった からこそ、「マリア」であり「マヤ」であったのでしょう。 もし、マリアでなくカリアだったら、きびきびとしていてクールで、ダメなものはダメ、と一刀両断されて しまいそうです。 マヤでなくタヤだったら、日常に存在していそうで、聖人を生んだ聖母というよりも、たくましい肝っ玉母さん のイメージがにおい立ちます。 これは何も、M音だったから聖母となりえた、といっているわけではなく、人間の脳が、満ち足りていて 温かく優しい聖母を、M音で呼びたかったからにほかならないのですね。 もちろん、同じように商品名でもそういったことはいえるわけです。 甘さとコクを期待するトマトジュースにM音を入れる。 すると、M音を聞いたとき、私たちは、とうの昔に忘れた授乳時の、甘く満ち足りたイメージを喚起されます。 そのM音に触発されて買った飲料と、M音のイメージが見事に合致すれば、脳は気持ちが良い。 気持ちが良ければ発音したくなるし、また買うし、人にも伝えたくなるのですね。 つまり、脳にとって気持ちの良い音は語り継がれるということがいえるのです。 私たちの身近にあふれることばたちも、このような経緯のもと歴史の淘汰を経て語り継がれてきたのですね。 |
|||||||
上級編 「シャネルとエスティローダー」 語感ジャーナル第66号より |
|||||||
| 今回は、女性に大人気の化粧品ブランドについて取り上げます。 「シャネル」と「エスティローダー」には、どんな秘密が隠されているのでしょうか? 女性の憧れ、シャネル。 シャネルといえば、オートクチュールの世界のみならず、ジュエリー、鞄、ウォッチその他、 高級品の世界を征する世界のメガ・ブランドですね。 化粧品においても然り。 百貨店のフロアでも、圧倒的な存在感を誇っています。 一方のエスティ・ローダー。 シャネルのような事業展開とは異なるものの男性用化粧品を含め、複数の美容関連ブランドを傘下に 収める巨大ブランドです。 ともに、華やかな響きが感じられる言葉ですね。 まずは、シャネルから。 先頭拍SHaは、聞いたとたんに光のシャワーを浴びたような気持ちになる音。 この光拡散効果のSHaも、なめらかな肌の音Neをつなげ、 一流ホテルの間接照明のような、やわらかで華やかな光拡散効果に仕上げています。 最後のL音は透明感を表し「華やかな女でいて、清純さを失わない」 シャネルが理想とする女性像が見えてきますね。 エスプリの効いたキュートないたずらっぽさも見え隠れして、さすがフランスのブランドといった印象です。 続いて、エスティローダー。 こちらは、ニューヨークのブランド。 先頭の発音は「e」ですが、それに続く光拡散効果の「Su」音を強調する構造になっています。 私たち日本人は、語頭の母音eを一拍に発音してしまうので気づきにくいですが、 欧米語の語頭母音eは、後続の子音を強調する音響効果があるからです。 全体で見てみると、躍動感やパワーもありますから、例えるなら、タフで有能なエグゼクティブ・ウーマン! シャネルはマダム・イメージ。 エスティ・ローダーはエグゼクティブ・ウーマン。 両者は実に、好対照ですね! ところで、「SH」といえば、忘れてならないのが 日本最大のコスメティック・メーカー「資生堂」。 SHaよりも強く集中力のあるSHiに、さらにS音を重ねて、眩しいぐらいの光拡散を感じさせています。 それに、最後のDoの重厚感も効いていてスターのようなきらめきと老舗の風格、エグゼクティブ感を 備えていますね。 多業態戦略でリーズナブルな商品を発売しても、この高級感は決して失われません。 化粧品は、安すぎても売れない市場。 だって、女性の憧れを投影しているのですから! |
|||||||
上級編 「牛丼と豚丼」 語感ジャーナル第67号より |
|||||||
| 無性に、どんぶりものが食べたくなる時ってありますよね。 そこで、今回は、牛丼(ギュードン)と豚丼(トンドン、ブタドン)の語感をみてみましょう。 ギュードン、トンドン、ブタドン。 どれも、膨張+放出+振動の発音体感をもっています。 G、B、Dは、10代の男子から働き盛りの男性までが好む音。同じイメージで差がないように見えますね。 しかし、このなかでも、ギュードンは、ちょっと別格な感じがしませんか? 牛肉のほうが豚肉より値段が高いから? いえ、いえ、実は意味の前に語感が影響しているのです。 それは、G音の拗音である「ギュ」に理由があるから。 G音は、喉を硬く締めて強い息をブレークスルーするK音に喉壁の振動雑音を加えて出す音。 ギャ、ギュ、ギョは、ぐっと強くつかんだような印象のG音に拗音が加わって、つかんで引きずり回す ような暴力的、かつ華やかな印象をつくります。 ギャラクシー、ギャオス、ギャンゴ、ギャンブル。 男たちを高揚させることばが並びますね。 一方、「トン」「ブタ」のT音は、上あごと舌の密着点を、B音は合わせた唇をブレークスルーして出す音。 たっぷりとしたイメージや、膨張するイメージがあるので、満腹感は満たせますが、高揚感、かっこよさが 足りません。 ということで、「牛丼でも食うか」は、「豚丼でも食うか」より、かっこいい感じがするのですね。 さて、豚も、「カツドン」「トン・トロ・ドン」となると、違った魅力の印象が出てきます。 「カツ」は、喉に力を入れて、舌の中央にも力を溜めます。 このため、ここ一番の力を入れたいときには、「カツ」と発音すると、力がみなぎるようなイメージが わきます。 「トン・トロ・ドン」は、発音して楽しく、更にR音の華やかさも加わって、うきうきした気分にさせてくれます。 「カツドン」「トン・トロ・ドン」の語感は、スタミナ切れのときや、元気のないときでも、気分を盛り立てて くれる強い味方と言えそうですね。 |
|||||||
上級編 「ひやひや、すやすや、うらめしや〜」 語感ジャーナル第68号より |
|||||||
| 思わずついたうそがばれないか、ひやひやする。 こどもがすやすやと眠る。 前者は、温度が冷たくて冷えている印象を、「ひ」で表していますよね。 この場合は、こころの温度、とでも申しましょうか。 しかも、そのひんやり感は、「ひやひや」ということによって、ひんやりしているような、してないような、 ひたすら冷たいわけではない、そんな意識のゆれを感じさせています。 そのゆれに、落ち着かない様子がよく表れているのですね。 そして、「すやすや」には、「すーすーと寝息を立てる」とはまた違う、健康的な睡眠時の 呼吸の様子を思わせる力があります。それは、「すーすー」と立てていた寝息が、「すやすや」に 表現をかえることによって、呼吸をしたあとの安らいだ空気、様子までをも表わすことになるのですね。 これらの、意識のゆれや、安らぎの様子は、「や」の音が作りだしていることになります。 「や」は、イからアへの変化、「ィア」を一拍で発音する音。 そのため、発音時に意識がゆらぎ、その対象や前後の音との関係によっては やわらかさや安らぎをイメージに上らせるのです。 「ひーひー」のH音だけでは、うそがばれそうでドキドキし、不安でゆれる気持ちを表現しきることは できなかったでしょう。「すーすー」のS音だけでは、呼吸音を超えた、こどもの安らかで 健康的な睡眠をわかりやすく表すことは難しかったでしょう。 ゆらぎを起こすY音には、このような力が秘められているのです。 ついでにいうならば、 暑い夏の日にぴったりな、「うらめしや〜」の怪談もの。 この、「うらめしや〜」も、最後の「や」が効いています。 この怨念のフレーズの末尾が「や」で結ばれることによって、ゆらいでゆらいで、おばけが消えていくのか そこにいるのか、意識があるのかないのか、あやふやなまま終わることになるのですから。 優柔不断、ゆるす、夢、誘惑。 ゆれるY音は、とにかくあいまい。 輪郭のぼんやりしたことばにも多く使われているのです。 |
|||||||
上級編 「タヌキはお人よし?」 語感ジャーナル第69号より |
|||||||
| 昔ばなしに登場する「キツネ」と「タヌキ」。どちらも人を化かしますが、キツネは、ずる賢い役どころで、 タヌキは、まぬけな役どころと、相場が決まっていますね。 そして、共に、神様や仏様とのゆかりも深いですね。 稲荷神社の神様の使いとなるキツネ。霊力がありそうな感じがします。一方、タヌキは、 「しょ、しょ、しょじょじ」の證誠寺のタヌキばやしにも出てくる、太鼓腹の陽気な印象です。 ところが、動物園やTV番組でキツネとタヌキを見ると、どちらも、似たような小柄で俊敏な野生動物です。 この昔ばなしのイメージの差は、どこから出たのだろう?と不思議になります。 そうなると、かつて童話に出てくるお話のようなことをしたキツネやタヌキがいたのでしょうか? これは、ちょっと考えられませんね。ここで視点を変えて、語感の作り出すイメージをみてみましょう。 どちらも、子音K、T、Nで構成されていて、強くタフで、愛らしい印象を持っています。 さらに先頭音、拍並びと、細かく見てゆくと印象の違いが見えてきます。 キツネは、先頭のK、中拍のTと、強い音が並ぶため、きつい印象。さらに、語尾母音e(Neのe)は、 親密な甘い感じを作りながらも、退いて、他人を遠のける感じをつくるので、 なんとなく愛らしいのに、クールなきついヤツだったという印象になります。 タヌキは、先頭子音Tの充実感と中拍のNuの親密感が響き合い、太めで、暖かく、ちゃっかりした印象。 語尾母音のi(Kiのi)は、まっすぐこちらに向かってくるので、親密感を更に強調しますが、同時にKiが 突き刺す印象なので、すっかり寛ろいで油断させた後、チクッと刺すので、なんとなくだまされた感じがします。 キツネもタヌキも最初の印象と、裏腹な後味が、人を化かすように感じられるのですね。 そして、キツネは、クールで賢く、ずるい感じに、タヌキは、太っちょで、お人よしっぽく、にくめないけど ちょっと悪い感じに昔ばなしの中で、印象付けられていったのですね。 印象付けられるという話に関連して、慣用句の記事を見つけました。 平成19年度「国語に関する世論調査」の結果が文化庁から発表されましたが、 「慣用句の意味の理解や使用」で70.8%もの人が間違えて使っていたことばに、「憮然」がありました。 正しい意味は「失望してぼんやりとしている様子」だそうです。間違いの「腹を立てている様子」のほうが、 「憮然」ということばの語感と合っていますね。 閉じた唇を力強い息で破って、はじき出す音Bをはじめにもつ「ブゼン」は、力強く、増殖するイメージが 立ち上がってしまい、失望してぼんやりとは、とても思えません。 漢語などの外来語で、語感に合っていないことばは、使っているうちに、そのイメージを 語感に合わせてしまって、意味をかえられてしまうのかもしれません。 |
|||||||
上級編 「しゅんすけ」 語感ジャーナル第70号より |
|||||||
| いつも女子に好感度の高い「しゅんすけ」君。 女性のあなた、もし女友達に「うちの会社の後輩、しゅんすけがさぁ」と言われれば、 顔も見たことがなくても、爽やかな笑顔が思い浮かんでしまいませんか? 「しゅんすけ」君は、女子に好感度の高い名前なのです。 今回は「しゅんすけ」君が解き放つ、「スターの魔法」について 紐解いていきたいと思います。 「しゅんすけ」は「SHuNSuKe」と表します。 S音は、息を舌の上で滑らせて前の歯茎にぶつけ、乱気流を起こして出す「風」の音です。 口腔内を冷やすので、クールな感覚です。 舌の上を滑るので適度な湿り気を帯びていて、滞ることがないので清潔な印象があります。 さらにSH音になると、つばがかなりとび、光拡散効果を起こします。 光の乱反射を連想させるのですね。 水しぶきの中を光がきらめき、スター性をいっそ想起させる。つまり、本人の実力以上の評価を されるのです。 この適度な湿度と涼感、なめらかさ、爽やかさ。 女性たちがほしい体感要素が「しゅんすけ」君にはすべて揃っています。 S音は初潮から女性ホルモンが安定する第一子妊娠までの女性脳に、たいへん心地よい音です。 この時期の女性たちは、生理不順や生理前症候群、生理痛に悩まされがちな世代です。 若い頃の、生理直前の全身のほてりや腹部の重さ、頭の重さ等々、思い出すだけでうんざりする。 大きく何かが滞ったような感じなのです。 この「滞りの質」に、滑らかな風の質S音はなんとも心地がよいのです。 特に、初潮から3〜4年の思春期には、親の干渉を振り切りたい思いを、この「滑りのS音」が 応援してくれるので、S音に傾倒する気持ちがさらに強くなります。 そしてSH音の光のシャワーにより、「しゅんすけ」君は、「滞りの質」の時期の女の子たちに、 なんとも爽やかに響き、みんなが憧れる存在になるのです。 |
|||||||
上級編 「”夏”に感じるノスタルジー」 語感ジャーナル第71号より |
|||||||
| いなか かなかな なつやすみ・・・ これは、阪田寛夫さんの「年めぐり」という詩の一節。 一年をうたう詩なのですが、この一行は8月を詠んでいるものです。 帰った田舎で見る田園風景。 お盆が過ぎてひぐらしがカナカナカナカナと鳴きはじめる。 そんな夏が、8月のひと月、毎年繰り広げられますよね。 この一行で思い出の中の夏休みが幻影のようによみがえるすごさに、 ことばのちからを強く感じます。 「いなか かなかな なつやすみ」は、 ”脳裏にある懐かしい夏”をよく表していると感じる、この感覚。 一体どこからくるのでしょうか。 原因を語感で紐解いてみると、「な」の拍に秘密がありそうなのです。 「な」は、舌全体をぺったりと上あごにつけたあと、すぐに引きはがして発音します。 この、上あごを覆い尽くす体感が、「はるばると覆い尽くして全体を眺める」イメージを ほうふつとさせるのですね。 この、俯瞰して眺める感じが、”在りし日の郷愁の中にある夏”を思い返す印象を与えているのです。 さらに、「夏の日」と言ったときの、あの切ない胸。 キュンとしますよね。 これも、「な」によって、甘酸っぱい”あの”夏を思い出させるからです。 さらに、舌を上あごからすぐに引きはがす現象が、瞬く間に過ぎてゆく短い夏を印象付けています。 上あごに舌がぺっとりとつく分、引きはがされたときの空虚さを一層感じさせるのですね。 10年以上前、classというアーティストの「夏の日の1993」という曲が流行しましたね。 これも、「ナインティンナインティスリ〜♪」と、「な」をこれでもか、というほど連発する歌でした。 このように、「な」には郷愁を誘う力があったのです。 過ぎゆく夏を惜しむかのように。 「夏の思い出に」と、お知り合いを誘ってみるのもいいかもしれませんね。 |
|||||||
上級編 「男女ともに人気のブランド名」 語感ジャーナル第72号より |
|||||||
| ブルガリ プラダ バーバリー、といえば、 男女ともに人気がある高級ブランドですね。 この秘密も、語感で紐解くことができます。 ポイントは、B音やP音と、R/L音の組み合わせにあります。 B音は、閉じた唇から溜めた息を放出させ、両唇を震わせて出す音。 発音直前の溜めた息が唇を膨らますので、まず、膨張の印象が強くもたらされます。 膨張に続く放出では、パワーや迫力を感じさせます。 そして、両唇が振動するので、繰り返しの生理イメージがあり、分裂や増大する印象や、 ゴージャスなイメージを生み出します。 それに、唾が飛び散るイメージだから”賑やかさ”もありますね。 「発散・放出」を連想させるので、男性には、なかなかウケのいい音です。 一方、女性たちといえば、身体の中に重さを抱え、膨満感に悩まされる思春期には爽やかで 清涼感のあるS音に傾倒しますが、その時期を経て女性ホルモンが安定してくると 「重くてうっとうしい!」と感じたB音・P音への抵抗は自然と失せていきます。 P音も、上下の唇をピンと張るようにして、口の中の息を破裂させて出しますから、 B音に近いイメージがありますね。 R/L音は、丸めた舌の先を、上の歯の付け根あたりで弾いて出す音。 この弾く動きは軽やかなリズム感を生み出します。 R/L音は自然に存在する音の中にはあまりない音で脳の中では、ガラスの質が浮かびます。 冷たさ、透明感などの印象をもたらします。 この「美しいから、触れたい」でも、「触れられないし、届かない」。 この感覚はまるで「高嶺の花」。 だから、高値でも売れるのでしょうか。(笑) パワフルでゴージャスなB音やP音。 そして、キレイな印象を作るR/L音と組み合わせるととても華やかな組み合わせとなり 男女ともに人気のあるブランドが出来上がります。 ブルガリ プラダ バーバリーは、その好例です。 尚、B音やP音は散財衝動を引き起こすタイプの音。 高級品市場で、上手くネーミングのアクセントになっていると言えるでしょう。 |
|||||||
上級編 「新幹線「ひかり」と「のぞみ」」 語感ジャーナル第73号より |
|||||||
| 鉄道ファンの人も、そうでない人も、不思議な顔(先頭形状)の新幹線、N700系には、 興味をひかれるのではないでしょうか。 1964年の東海道新幹線のひかり号も、他の電車とは、まったく違った、まんまるお鼻で、 当時とても新鮮でした。 いつの時代も、新幹線は、わくわくするような列車ですね。 さて、今回は、新幹線の名前の語感をみてみましょう。 東海道・山陽新幹線の最速列車は、「のぞみ」。そして、新幹線開通当時から、おなじみの「ひかり」。 この2つの名前では、どちらのほうが速いとお感じになりますか? では、「ひかり」から、見てゆきましょう。 先頭のHi は、息が気管から口元まで抜けるのが、日本語の拍の中でも最も速い音です。 体内で暖まった息が、すぐに口元に出るので熱く、舌に絡まないので、つばと混じらず乾いています。 次のKa も、硬く、乾いて、輝き、回転するスピード感があります。 最後のRi は、透明感と輝きを持ち、語尾母音の i が、突き刺すようなスピード感を さらに、強めています。 このように、「ひかり」は、透明なクリスタルが、閃光を放つほどの猛スピードで走るような 印象があります。まさに、光のイメージそのもの。 「ひかり」は、これ以上速いものがないという語感。超特急にふさわしい名前ですね。 さあ、「のぞみ」です。速さの印象は、「ひかり」にはかないません。 しかし、新幹線の中で、トップに位置する「のぞみ」には、速いだけではない、 気品と、高級感があります。 先頭音のNoは、上あごを優しく舌でなでて、鼻腔を響かせるので、大切に包み込んで もらったような、とても私的な印象があります。 次のZoも振動させて、遠くまで広く大きく包み込むような感じで、重みのある高級な 雰囲気もつくります。 最後のMi は、愛らしい充実感と、のびのびした躍動感があり、動きを感じさせます。 「のぞみ」のCMで、小学生のお孫さんが、新幹線に乗って、おばあちゃんに会いに行く というシーンがありました。 大切な人を安全に送り届けるという、日本の最高技術を表すネーミングには、この「のぞみ」の 優しい高級感がぴったりですね。 実際に最速で運行しているのは、「のぞみ」ですが、その超特急に、速さではなく、 気品を求めるなんて、なんとも粋ですね。 |
|||||||
上級編 「ママ、母さん、母、おかん」 語感ジャーナル第74号より |
|||||||
みなさんは、お母さんのことをどう呼んでいますか。 お母さん、ママ、母ちゃん、おっかぁ…。 呼び方は、その家によって、さらには、ご自身の中でも成長段階によって様々異なっていますよね。 語感から紐解くと、呼んでいる側が母親という対象へどのような気持ちで対しているのかを、 まるで深層心理を分析したかのように見て取ることができるのです。 では、早速ひとつひとつの呼び名について見ていきましょう。 まずは、「ママ」から。 ママはご察しのとおり、最も甘えた呼び名です。 M音は、乳児の頃、母乳を飲むために乳首をくわえたときに自然と発せられる音。 母性の象徴ともいえる音ですね。 思う存分甘えられるうえに、頭蓋に響きわたる鼻濁音でもありますから、精神的に占有率が高いイメージも。 母親の過干渉に参ったら、「ママ」以外の呼び名で呼ばれることをおすすめします。 次は、おそらく一番多く使われているであろう「母さん」です。 カアサンは、K音とS音がテンポよく入っています。 K音とS音は、クールで機敏な音。さらに、カ、サと母音がaなので、颯爽とした明るさを感じます。 ですから、カアサンは、シャープで機敏、気働きと家事炊事をささっとこなす、母親の鏡ともいえる人物を 指しているはずです。 母親を「母さん」と呼ばれている方は、人生を切磋琢磨していくうえでの目標として、 もしくは、パートナーとして母親と接しているのでは。 そして、「母」へと続きます。 唇から発話された瞬間に息が霧散する音、「ハハ」。 いるようで、いない。いないようで、とてつもなく巨大な、まるで大海原や入道雲のような存在感がある。 このような不思議な存在のイメージが浮かび上がるのがハハです。 しかも、息の音ハは肺の中の空気を一気に押し出しますから、あたたかくてほんわりとしているので、 母親の情を大きく感じる音なのですね。 希薄な存在感とあたたかい情を感じる、「母」。遠くにいて母親を想うとき。 望郷の中の母親は「母」がダントツで似合いますね。 最後に、吉本の芸人さんがよくおっしゃる「おかん」を見てみましょう。 包み込む包容力と大きさを表すオのあとに、明るく開放的であっけらかんとしたカが続きますね。 そして3拍目はンで、楽しくはずんで完結です。 したがって、「おかん」と母親を呼ぶ方たちにとって母親は、おっきくて明るくて頼もしく、 同時にちょっぴり娯楽性を含んだ愛すべき存在なのでしょう。 まだまだ底知れぬ威力をもつ、日本人にとっての母親という存在。 自身と母親の関係性も、呼び方によって演出することができるのですね。 |
|||||||
上級編 「アサヒとキリン」 語感ジャーナル第75号より |
|||||||
| よく冷えたビールが美味しかった夏が終わってしまいましたね。 そして、またまたビールの美味しい食欲の秋がやってきました。 こうして、1年を通して飲まれるビールですが、「とりあえずビール」と、はじめだけビールで、後は 他のアルコールに移る方、はじめから最後までビールの方と、それぞれのお好みがあります。 ビールの銘柄にも、こだわりのある方が多いですね。 さて、今回は、日本のビールシェアトップを争う、アサヒとキリンの語感をみてみましょう。 アサヒは、辛口・ドライで、フレッシュ。タフな男っぽい印象です。 落合信彦氏が出演した1987年〜1989年のアサヒスーパードライのCMは、世界で活躍する タフな男のイメージでした。 辛口・ドライのイメージを持ち、フレッシュさを増強する「スーパードライ」というサブブランド名は、 アサヒの印象を強く打ち出すのに成功しています。 そして、CMの落合氏のイメージもピタリと合って、1988年には、キリンビールを抜いて、 国内ビールシェア首位になりました。 商品と語感と映像が、気持ちよいほど合うとこんな劇的なこともあるのですね。 さて、「ビールは、キリン!」という方もいらっしゃいますよね。 1954年からずっとトップだったブランドですから、ファンも多いわけです。 キリンは、キレ・爽快感が圧倒的に強く、フレッシュとドライ・辛口が続きます。 すっきりキレがあり、後味さっぱりで、クールな都会派の印象をつくっています。 発泡酒では、キリンがシェアトップですが、麒麟淡麗のタンレイは、キリンのキレ・爽快感を 増強させる語感。アサヒスーパードライと同じように、ブランドの特徴をうまく強めています。 キリンといえば、キリンレモンも、クールで透明感があって、炭酸飲料にもってこいの名前です。 チューハイの氷結もいいですね。 このように、キリンは、キレ・爽快感のあるサブブランド名で、アサヒは、辛口・ドライのサブブランド名が、 ヒット商品になっています。 けれども、時代によって、好感度が上がることばや、拍が変わるので、いつまでもブランド名と サブブランド名の印象が同じものが良いわけではありません。 2006年あたりから、プレミアムや、ザ・○○などの商品名が見立ってきましたよね。 これは、複雑な味の深みや、熟成、コクなどを感じさせます。 そして、時には、気分を変えてというシーンもあります。 たとえば、「今夜は、カクテル」というとき。 キリンもアサヒも甘さの印象が弱いので、カクテルはあまり似合わない感じです。 こんなときは、高級感や、コク、甘さがあるサブブランド名を、ブランド名より目立つように、 または、ブランド名を隠して使ってゆくという手があります。 さて、「おうちで、ゆっくり飲もうかな。」という気分の時、「飲まなきゃ、やってられない。」という気分の時、 「大切な記念日」という時、さまざまなシーンがありますね。 今夜、あなたは、どのアルコールを選ぶのでしょうか? いつも何気なく選ぶ、その名前に気をつけてみてください。 |
|||||||
上級編 「濁音の魅力に虜になる男たち」 語感ジャーナル第76号より |
|||||||
| 漫画雑誌の発売日って、とても待ち遠しいですよね。 皆さんは少年少女時代何を読んでいましたか? ジャンプ・マガジン・サンデーやリボン・マーガレットなど、様々ありますよね。 怪獣の名前にも良く使われる、濁音ですが漫画雑誌の名前にも用いられることが多くあります。 濁音は「オトコ子ども」が好きな音。 その背景には、生殖可能期間中のホルモンバランスの男子を興奮させるサブリミナル・インプレッション があります。 今回は、濁音の持つ魅力について紐解いていきたいと思います。 膨張+放出のブレイクスルー系清音(P,K,T)は、男性の生殖行為における意識の質を 刺激しますが、これに振動を加えた濁音(B,G、D,Z)は、さらなる力強さと膨張感、 飛び散る賑やかさを加え、エンターテイメントの興奮を引き起こします。 ブレイクスルー系ではないZ音は、確実な濁音にするためにいったん歯の うらに息を溜めて放出している。 舌で震わせる息の量を増やして、音響効果をあげます。 これにより、本来は膨張+放出を持たないS音を基音にしながら、Z音も膨張+放出+振動の 濁音創生に成功しています。 昔も今も、男たちのロマンを掻き立てる単語は、濁音+ブレイクスルー系清音で構成されているものが 多いようです。 少年漫画雑誌のジャンプ・マガジン・サンデー・モーニングと並べていくと濁音傾向が強いように感じます。 B/P音には、迫力を感じさせる力があり、 D音には風格を感じ、 G音には偉大さや凄みを感じます。 Z音には豊かさや人懐っこさがあります。 少年漫画の特徴は、主人公が敵を倒し成長していくヒーロー者や戦闘物・戦隊物が多く、 濁音の膨張+放出+振動の力が「オトコ子ども」を引き付けてしまうのです。 もちろん少女漫画雑誌の中でもリボン・マーガレットと濁音ひとつ程度はあります。 けれど、濁音で始まるタイトルはほとんどありません。 ネーミングで濁音を使用することによって、ブレイクスルー系が持つ放出感から散財衝動を引き起こし、 振動によるエンターテイメント効果から、漫画の購買行動につながる、といえるかもしれませんね。 漫画雑誌の名前だけでなく、皆さんの周りにも彼らを虜にする濁音を用いたネーミングを 探してみてはいかがですか? きっと、男たちを虜にしているものには、濁音が使われているはずです。 |
|||||||
上級編 「思春期前後で異なる女性マーケット」 語感ジャーナル第77号より |
|||||||
女性にとって思春期にあたる12〜13歳は、全身のほてりや腹部の重さ、頭の重さ等々、 重く滞った不快感に悩まされがちな時期です。 同時に、マーケットの転換期と言えます。 好感度の高い言葉は、幼児期に愛していた「B音、P音、M音」から、 いっきに「S音、K音、T音」へと変わっていきます。 唇に刺激を与えるB音やP音は、幼児に生理的な気持ち良さやリラックス感を与え、 その後も継続して、子供たちから愛されます。 そしてM音には満足感や充実感のイメージがあり、母性の癒しを感じ、好感を持ちます。 しかし、思春期を境に、これらの音は疎ましい存在に変わります。 重っ苦しい身体感覚や親の干渉を振り切りたくなる年頃としては、S音の疾走感や爽快感は まるでそれを応援してくれるようで、傾倒する気持ちが強くなります。 硬く乾いたK音、叩き付けるようなT音も好みです。 これらに全年齢層の女性に”キレイ”を感じさせるR/L音を加えた四つの音は 若い女性にモテる音と言えます。 プーさん、パンダ、バービー、ムーミン、ミッフィー、ディズニーランドから、 サンリオ、セブンティーン、キティ、ケータイ、ディズニーシーへ。 こうして並べると、変化がよくわかりますね。 音だけでなく、色やかたち、材質、人間関係にも、「滞りの質へのうんざり感」を軽減する 「さらりとした質感」を求めているので、様々なマーケティングに活用できそうです。 |
|||||||
上級編 「新撰組が放つインパクト」 語感ジャーナル第78号より |
|||||||
300年続いてきた江戸幕府から、明治維新へ転換期を迎えていた日本。 倒幕佐幕の嵐が吹き荒れる中、数々の浪士隊が混迷社会に誕生しました。 中でも、この現在においてでも強烈な印象を残しているのが新撰組です。 シンセングミは、シとセがそれぞれSH音、S音。発音するときに唾が飛び、 その乱反射から光拡散効果を潜在的に感じさせます。 さらに、シ、セのそれぞれをはさむかのように、ンが存在。 ンは、舌を上あごに軽くあてると同時に、頭蓋にハミングが響きわたり、暗い閉空間を想起させます。 つまり、シンセンが、光、闇、光、闇、の印象を鮮烈に生み出し、まるで暗闇の中で白刃が閃光を放つ、 居合切りのような印象を彷彿とさせるのですね。 当時は、他に見廻組などの隊も存在しました。 新撰組自身も、壬生浪士隊、甲陽鎮撫隊などと隊の変遷を遂げたりもしましたが、 やはり、京都の町を震え上がらせた”殺戮集団”による真剣の恐怖と、徳川幕府への終生の忠誠を 誓った一途さとを表現しているのは、「シンセングミ」。これに勝るものはないでしょう。 新撰組は圧倒的なインパクトのあるネーミングだった、といえそうです。 その名前が後世に残る名前なのか、歴史を刻む名前なのか、はたまた消え去っていくものなのか。 翻って、その名を宿すものは、後世に名を残す偉業を成し遂げる存在となるのか否かは、 語感という視点によって、戦略的に仕掛けていくこともできるのです。 さて、自身のもつプロジェクト、あるいはミッションは、 どのような名を掲げて、どちらの方向へ航海をしているでしょうか。 語感の持つ力が奏功していることを願うばかりです。 |
|||||||
上級編 「愛燦燦(サンサン)」 語感ジャーナル第79号より |
|||||||
| “愛燦々(サンサン)と この身に降って 心密かなうれしい涙を 流したりして” これは、美空ひばりさんの1986年のヒット曲の歌詞です。20年以上前の曲ですが、 今聞いても、いい歌ですね。 小椋佳作詞のこの歌の歌いだしは、 “雨潸々(サンサン)と この身に落ちて わずかばかりの運の悪さを 恨んだりして”です。 “雨 潸々と”からはじまって、“風 散々と”、“愛燦々と”と、続き、「サンサン」が、繰り返し出てくる 印象的な歌詞になっています。 “愛燦々”の「燦々」の意味は、辞書で引くと、「太陽などが明るく光り輝くさま。彩りなどの鮮やかで 美しいさま。」となっています。 普通は、「陽が燦々とふりそそぐ」のように使うのを、「愛」がふりそそぐイメージに「燦々」を使って、 心にしみる歌詞になっているのですね。 「サンサン」は、ふりそそぐ陽の光を感じさせます。これは、風が吹き抜けて、適度な湿気のある、 心地よいS音の「サ」の発音体感がつくりだしています。 同じ陽の光でも、「カンカン照り」では、激しく日焼けしそうで、肌を出すわけにはいきませんが、 「サンサン」なら、陽の光に思う存分あたりたい気持ちになります。 K音と、S音は、こんなに違うイメージを作るのですね。 さて、S音の発音体感をもう少し詳しく見てみましょう。 S音は、舌の上を滑らした息を歯に当てて、歯で擦るようにして出す音。 舌の上を滑らせるので、息には、適度な湿度があります。 歯で擦り、歯の隙間から抜ける息は、乱気流になり空気をはらみます。 S音は、湿度感と空気感をもっているのです。 「空気感がある」というのは、木綿の布のように、触った時にべたっと密着はせず、空気を含んだような 感じがすることです。 「さらっと」、「しっとり」、「すべすべ」、「さっぱり」など、気持ちのいい手触りをイメージさせます。 理想の肌を作る化粧水などのキャッチコピーのようですね。 このようなS音の印象から「燦々と」をみると、私たちは、陽射しの視覚イメージでだけではなく、 暖かい陽射しが、肌をここちよく滑るような触感イメージも持っていることに気付きます。 このため、サンサンと感じる太陽には、親密感があり、恵みと癒しを与えてくれる印象があるのですね。 愛も雨も「サンサン」とふるとき、人や自然を慈しむ暖かな印象です。 「ザンザン」では、響きすぎて過剰ですね。 愛を表現するのに、もし、「カンカン」を使ったら、火傷しそうな身に危険を感じさせるほどの激しい愛 ということになるかもしれません。 |
|||||||
上級編 「文化と社会と新聞紙」 語感ジャーナル第80号より |
|||||||
| 寝付くことができなかった夜には、新聞配達の音で時刻を知る。 あぁ、もうそんな時間になったか、と。 新聞には、あの開いたときのインクの香りとともに、数々の思い出が想起される、という方も 多くいるのではないでしょうか。 インターネットが普及し、瞬時に世界中の情報を目にすることができるようになった現代。 しかしそれでも、新聞の専門性と質の高さは他を圧倒するものとして存在します。 数ある新聞の中でも、今回は朝日、読売、日経の三紙をを取り上げてみましょう。 アサヒは、まっすぐに進む、汚れのない光線のようなまぶしいイメージを彷彿とさせる音。 口腔を高く空け、口の中を全開にするア、続くさわやかな息が放たれ、光の乱反射を意識させるサ、 肺から出た熱い息が高速で狭い口腔内を駆け抜けるヒ。 これらは、嘘偽りのない、とにかくまっすぐで「正義」に満ちたフレッシュな情報新聞、という印象を 与えています。 対してヨミウリは、やわらかい弛緩の音ヨに、鼻音とぐっと前に出る意識のミ、一呼吸置くウ、 狭空間に舌先が小さく翻るリの、やさしさと愛らしい可憐さを思わせることばです。 したがって、読売新聞は、庶民のことを思い、あたたかい草の根目線で情報をすくいあげていく新聞 といえるのかもしれません。 さて、この二紙に、現役ビジネスマンたちの固い支持を得て猛追するのが、日経新聞です。 ニッケイは、狭くした口腔内で、ぺたっと上あごに張り付いた舌を潔よくはがすニに、促音が入り、 軟口蓋を硬くして乾いた息を発するのどのブレイクスルー音ケが続きます。 この鼻音でありながらも舌を緊張させ、硬さを感じさせるニと、強く乾いた音ケが、経済社会をクールに 鋭く切り取る印象を与えます。 ですから、日経新聞は、ビジネスマンのほしい情報にしっかりと訴求している新聞というイメージの ネーミングで、その媒体の力を後押ししているのですね。 文化も経済も成熟した今、新聞各紙がどのような運命をたどるのか。 これからの時代が求める、最強の新聞が登場するなんてことも、あるかもしれません。 |
|||||||
上級編 「朝バナナダイエット」 語感ジャーナル第81号より |
|||||||
このところ、食料品を買いにスーパーに行くと、バナナが売り切れていることが多くなりました。 どうも、「朝バナナダイエット」の流行のせいらしいのです。 バナナは、皮を手でむいて、簡単に食べられるので、忙しい朝にはぴったりですね。 しかし、実は、「夜バナナダイエット」のほうが、効果があるという説もあります。 どちらが、正解なのでしょうか? この回答は、みのもんたさんにぜひ、調べていただきたいですね。 さて、ここでは、「朝バナナ」と「夜バナナ」の語感を比較して見ましょう。 「あさバナナ」の「あさ」は、明るくさわやかなイメージを作ります。 母音「A」は、無邪気で、開放的な発音体感です。 風邪をひいて、お医者さんに喉の奥まで見てもらう時、「あ〜」と言って、口を開けますね。 また、背伸びをするときに「あ〜」と声が出てしまいますね。 このように、「A」は、人との距離を感じさせない、内部まで見せてしまうほどの親近感や、素朴さを 感じさせます。また、のびのびした、リラックス感もつくります。 そして、何かに気づいた時、「あっ!」と言いますね。これは、次の行動に移るために、 体をニュートラルな状態にします。このため、「A」は、何かを始めるイメージも持つのです。 「あうん」も「あいうえお」の50音も、「A」が始まりですね。 この始まりの印象の「A」と、爽やかな風が吹く印象の「Sa」が並ぶ「あさ」は、1日を始める時を指す ことばに合っていますね。 この「あさ」の後に続く、「バナナ」は、唇の破裂音「Ba」のつばを飛び散らせる楽しさと増殖する イメージを持ち、「Na」の優しさと、ペッタッと上顎につけた舌を勢い良くはがす気持ちよさも 感じさせます。 こう分析してみると、「あさバナナ」は、朝食にこそ、ふさわしい語感ですね。 では、「よるバナナ」はどうでしょう? 「よる」は、揺れて境界線があいまいになる音。静かに眠りに落ちてゆくような、1日の終りの イメージです。 この「よる」と、元気に増殖するイメージの「バナナ」は、あまり合いませんね。 語感では、「あさバナナ」のほうが、エネルギーチャージができそうです。 |
|||||||
上級編 「寒い季節の必需品」 語感ジャーナル第82号より |
|||||||
| 冷え性の私。 朝晩寒いこの季節になると、これから始まる越冬生活を考え、少し感傷的に。 アレやコレやと、かなり準備が大変です。 もしも、森の泉の近くで嘆く私に、女神様が 「太らないカラダ」 「美しいカラダ」 「寒くならないカラダ」 お好きなものを、一つ選びなさい と、言ったなら、迷わず「寒くないカラダ」を選びます。 寒くないんだったら、あとは努力の範囲で充分! ああ、でもこれは妄想。 現実には、防寒対策しながら、毎日、せっせとお仕事ですね。 そんなとき、オンデマンドで役に立つのが携帯できる防寒グッズ「カイロ」。 今日は、お助けグッズ「カイロ」の秘密を語感から紐解いていきます。 「カイロ」の語感は、実はこれだけだと「あと一押し」のインパクトに欠けます。 喉をぐっと絞り、硬さやドライさをイメージさせる「カ」の音、 続いて、舌の根元から中央に向かって緊張感を作って出す、勢い溢れる「イ」、 そして最後を、舌を技巧的に用いるため人工的な印象がある「ロ」で締めくくる「カ・イ・ロ」は、 ”熱”や”温度”というイメージよりも、むしろ「カイロの”はし”の角を持って上下にふってるときに、 中身の鉄粉が、一生懸命シャカシャカしている」状態に近いのです。 なんだか、あと一つもの足りない。 そう、お気づきかもしれませんが 先頭に「ホッ」を持ってきて「ホッカイロ」とすると、ぐっと”熱”や”温度”を感じるようになります。 このホの音は、”肺の中の温かい空気をそのまま口元に運ぶ音”。 口の中の体感そのままに、「ホっと温かくなるイメージ」を彷彿とさせるのです。 近いところでは、「湯たんぽ」も同様で、まるで”持ち運び自由な足湯”という語感をしています。 柔和な「ユ」の音は、寒さのこわばりや緊張感を解きほぐし、粘性のある「タ」と続く「ン」の並びには、 たんまりと温かいお湯がたまっているイメージがありますね。 懐かしく和む、でもちょっと面倒もある(笑) 愛嬌のあるグッズです。 |
|||||||
上級編 「風邪気味にはトローチ」 語感ジャーナル第83号より |
|||||||
| 天高く、馬肥ゆる秋。 晴々とした秋空は、すがすがしく、こころのうちまでも鮮やかさに彩られる気分になります。 昼間はまぶしい日差しに照らされ、日向はとくに暖かいのですが、朝晩冷えるのがこの頃の陽気。 この寒暖の差に、体調を崩している方も少なくないでしょう。 乾いた空気にさらされ、ヒリヒリと痛むのどをやさしく守ってくれるのが、定番の「トローチ」。 ご存じ、口中に含んで徐々に溶かし、口腔粘膜から吸収させる錠剤です。 まるで、商品名かのように光るネーミングがついていますが、これは、英語の薬学上の名前。 「troche」は日本語訳すると、口中錠、もしくは、舌下錠というのです。 日本語で呼ばず、トローチと英語のまま使われるのようになったのも、実体と実感が「トローチ」のほうが ぴったりとマッチしていたからなのでしょうね。 「ト」は、ふっくらと膨らませた舌を上あごにつけ、はじく瞬間に発音をします。 その際、唾がたっぷりとはじけ飛び、ゲル状の濡れた印象を与えます。 続く「ロ」は、「ト」でたまった唾をそのまま舌で翻すかのよう。 濡れたイメージに粘性をプラスさせる効果があります。 トロトロという擬態語の、あの感じ。 艶とゲル状の粘性が、乾き炎症を起こしたのどにやさしい潤いをもたらしてくれるかのようですね。 「ト」も「ロ」もオ段の音なので、包み込まれる印象は特大。 そこへきて最後に生命力あふれる「チ」がきますから、患部にしっかり利き、元気にしてくれる イメージがわくのです。 つまり、「トローチ」には、炎症を起こしたのどに潤いと効果をもたらしてくれると思わせる、 魔法の語感が宿っていたのですね。 さて今宵。 あなたはどのメーカーのトローチを舐めますか? 様々な会社から、トローチは発売されています。 風邪はひき始めが肝心ですよ。 |
|||||||
上級編 「エコとエゴ」 語感ジャーナル第84号より |
|||||||
「エコ」と「エゴ」。「コ」を濁音の「ゴ」にしただけで、ずいぶんと違う意味になる言葉ですね。 この違いの印象を語感から見てみましょう。 先頭音「エ」は、あり得ないと思うこと、拒絶したいことがあるとき、 つい「え〜っ」と、使ってしまう音ですね。 これは、「え」と発音するとき、舌を平らに広げて、口の下奥へ引き下げるようにして出すので、 身を低くして、後ざかる感じを作るからなのです。 嫌な対象から離れたいときに、使うのにぴったりですね。 いやな対象以外にも、「え」は、距離を感じさせ、遠くはるかな印象を作ります。 空間の広さ、遠さ、時の永遠性を想起させます。 ものごとから離れて、俯瞰的に全体を見るような感じも作ります。 また、一歩下がった感じがするので、奥ゆかしい印象もあります。 「ええ」と会話で答えるときは、拒絶を表すのではなく、奥ゆかしくて、品のいいエレガントな 感じがしますね。 このように、「え」の身を低くして遠ざかるような発音体感の印象は、距離感や、俯瞰的に物事を とらえる客観性、奥ゆかしさを感じさせます。 その裏腹に、拒絶感や、狡猾さ、へりくだった卑屈さなども感じさせます。 さて、次に、「コ」と「ゴ」を分析してみましょう。 「コ」は、喉の奥を硬く締め、息をその硬くした喉にぶつけて出す音。 喉を緊張させるK音と母音Oで作る音は、入口を絞って、大きな閉空間をつくる印象があります。 そのため、コンパクトにまとまった感じや、大切に包む感じがします。 「エコ」は、地球という遥かな対象に思いを巡らせつつ、身近で大切なものを両手で包んで、 まとめるような語感なのですね。 一方、「ゴ」は、「コ」の濁音で、K音に、喉の震動が加わったのがG音です。K音より喉を締め付け、 ぶつける息も強いので、喉首をグイッとつかまれて、振り回されるような暴力的な感じがします。 誰もかなわないような強さと、豪華な印象も持っています。 「エゴ」は、全体を俯瞰している大人の視点をもっていながら、周りを痛めつける感じです。 「あの人のエゴ」などと言う時、その行為に対する許せない気持ちと、そんな人から、離れたい 気持ちが、起こってしまいます。 先頭音「エ」のイメージが、良いほうになるのか、悪いほうになるのか、または、ミックスした感じに なるのかは、次の音「コ」と「ゴ」の影響だったのですね。 |
|||||||
上級編 「温かく優しい仏の響き」 語感ジャーナル第85号より |
|||||||
| 仏様は、そっと身近に、いつも、温かく昔から私を守ってくれる存在。 何の疑問も持たずに、そう思っていました。 仏壇の前でもお墓の前でも、手を合わせるとき私の呼びかけは、「仏様」。 「ご先祖様」ではないのは、敬愛のほかに、親愛の情も感じているからかもしれません。 では、「ほとけ」にはどうして、このような温かく優しい響きが 宿っているのでしょうか? 「ほ」の特徴は、包み込むように温かいこと。 肺の空気をそのまま口の中にいったん留めるため、口の中で体内温度を感じます。 同じH音でも、肺の中にある空気を一気に口元に運ぶ「は」は熱のエネルギーのほとばしりの 印象が強烈ですが、「ほ」は、息を口の中で保持してから出すので、口の中を均等に温めます。 だから、安らぎのあるプライベートな温かさ、という印象です。 また「ほ」は最大量の息を使う音のため、発音すると自然と肩の力が抜け、 安らぎを感じます。一安心したときに、「ほっとした」なんてよく使いますね。 「と」という音にも、包み込まれる確かな安心感があります。 充実感や確かさを感じさせるT音の特徴に、母音の「お」による、周囲を包むイメージが加わるからです。 そして、喉をきゅっと絞って出すK音の緊張感と、母音の「え」が持つ広がりと奥ゆかしさが同居する「け」。 こうして語感を読み解いてみると、「ほとけ」という言葉は包容力の本質を表わしているように思います。 ただ包み込むだけでは、まるで存在を押し付けているかのよう。 安らかに、確かに相手のそばに存在しながらも、それは、広く深遠な世界からの眼差しのようです。 |
|||||||
上級編 「毎年必ず、彼はやってくる」 語感ジャーナル第86号より |
|||||||
さあ、いよいよ来週からは、12月です。 一年は早いですね。忘年会、年末に向けて仕事も大忙しいです。 それにクリスマス・お正月楽しいことがいっぱいあります。 しかし食生活も、生活も乱れてしまい毎年、体調を崩してしまう人も多いのではないでしょうか? そんなときに、私たちの前に現れるのが「インフルエンザ」です。 必ず、毎年やってきます。 この何故か毎年やってきて、私たちを苦しめるインフルエンザについて、 医学的な分析ではなく、語感からその謎を解き明かしていきたいと思います。 「イン」の音で前向きに強く働く力により、インフルエンザ・ウイルスが体内に浸透してくる気がします。 そして「フル」の音で、実体のつかみにくい感じがたまらなく、怖く感じてしまいます。 さらに「ザ」の細かい振動による刺激音によって、体のすみずみまで菌が繁殖しそうな 恐怖感をもってしまいます。 さらに、「ウイルス」と繋がって呼ぶことで、「ウ」の体感が持つ、内に秘めた強い力のイメージに より、菌の力がパワーアップされ、死の危険をもたらし、とても怖い病気になる印象を与えるのです。 しかし、私たちを守ってくれるヒーローがいます。 それが「ワクチン」です。 「ワ」は、母音のウの口の緊張を緩和して出す半母音です。 母音ウの強い内向きの力に、「ア」が反発するため、膨張パワーが「ク」と協力して、 「インフルエンザ・ウイルス」から私たちの身を守ってくれるヒーローとなるのですね。 |
|||||||
上級編 「うつくしい祈り」 語感ジャーナル第87号より |
|||||||
| うつくしい祈り。 ひとは、この世に生を受け、生み出されたときに名を授かります。 黒川伊保子はよく、「名まえは、新しいいのちが生まれてきたそのときに降りてくるもの。 その子がいのちの色をもっているのよ」と言っています。 そして、親が子にささげる名は、想いを込めた、うつくしい祈りでもあるのだ、と。 このたび、感性リサーチでは、「Beautiful Name Again」プロジェクトに参加するご縁をいただきました。 このプロジェクトは、まさに、親が子に贈った「いのちの次のおくりもの」 つまり名まえをふたたび、あらためて思い返してほしい。そんな願いから発足したプロジェクト でもあります。 そこで、このご縁の記念に、プロジェクトのたいせつなことばでもあります”ビューティフル”を 語感分析したいと思います。 「ビュー」は、「ビ」の拗音。唇の振動が、小さな所へまとまって集約されていく体感です。 膨張する迫力が集中していく時間軸を感じます。 「ティ」は、「テ」の拗音。 口腔内を最も狭く、小さくして発音します。狭い中でふくらんだ舌が思い切りはじかれ、 つばが飛ぶ音です。艶と元気がある音ですね。 「フル」は、ふんわりした息の音に舌がかわいく翻る音の組合せです。 ですから、「ビューティフル」は、グラマラスで艶があり、わくわくするイメージ。 あふれる生命力といのちの持つプリミティブな躍動感を表現しています。 うなじの白さや、はらはらと舞う粉雪に「ビューティフル」が似合わないのはやっぱり語感が それに異なるからなのではないでしょうか。 「名まえ」はうつくしくもあり、ビューティフルでもある。 それは、うつくしい祈りを込められたものでもあり、あふれるエネルギーを 秘めたものでもあるからですね。 あなたの名まえには、どのような祈りが込められているのでしょうね。 |
|||||||
上級編 「ジェームズ・ボンドの腕時計」 語感ジャーナル第88号より |
|||||||
| 007と言えば、アクションムービーの代表格ですね。 その英国のすご腕諜報部員、ジェームス・ボンドが持っているものは、ボンド・カーに、 ボンド・ガールと、世界中の男性の憧れです。 さて、このジェームス・ボンドの腕時計は、なんでしょう? シリーズ第21弾の、カジノ・ロワイヤルでのボンドガールとの会話では、 彼女に「ロレックス?」と聞かれて、「オミーガ」と答えています。 ここに出てくる「ロレックス」は、高級時計として有名ですね。 では、「オミーガ」は?これは、高級時計の「オメガ」のことです。 ロレックスは、字幕がなくても、ロレックスだとわかるのに比べて、「オミーガ」のほうは、 ちょっとわかるまでに時間がかかりました。 実は、ロレックスは、世界中の人が、同じように発音できるように、考えられたブランド名なのだとか。 このおかげで、ロレックスは、誰が発音しても、ほぼ同じイメージを訴求できるのですね。 こんなことをブランド名を決める時に、考えていたなんて、品質の良さだけではなくて、 改めて凄いブランドだと思います。 一方のオメガ。こちらも、人気の高級時計ですが、日本人の発音と英国の諜報部員の ボンドさんの発音は、かなり違う感じです。 「オメガ」は、口腔内に大きな閉空間をつくる「オ」と、平たく広げた舌を後方に引き下げる「エ」段の音 「メ」で、大きく、広く遥かな印象を作ります。そして喉の破裂音「ガ」が、圧倒的な力を感じさせます。 男性に憧れられるジェームス・ボンドにふさわしい語感ですね。 「オミーガ」の「ミー」は、前方に強く出る「イ」段で、M音の音。M音は、柔らかく唇を閉じ、口腔内に ゆるく息を満たし、鼻腔を振動させて唇を離して出す音です。このため、優しく甘い印象があります。 「メ」もM音なので、「イ」と「エ」の母音の違いが、大きいのですが、最後の「ガ」にも違いがあります。 映画の中では、最後の「ガ」は「ミー」の影響で、鼻にかかった鼻濁音になっていました。 このせいで、「ミーガ」の部分が、鼻にかかって優しく甘く、くぐもったように響きます。 体の内側を柔らかく震わせる発音体感を持ちます。 映画のワンシーンとしては、美女との会話に、ぴったりなセクシーな語感だったのです。 「オメガ」といえば、タフなスポーツウォッチと思っていたので、 こんなセクシーな語感だと、まるで違う時計のブランドだと感じてしまったわけですね。 そういえば、ボンドガールは、時計のブランド名を聞いた後、 うれしそうに、「ビューティフル」と言っていましたよ。 |
|||||||
上級編 「ヒューマニティー溢れる人情の温かさ」 語感ジャーナル第89号より |
|||||||
吐く息は白く、身体を刺すような冷たい風が吹き、コートの他にマフラーや手袋が 必要になってきました。 寒さで手がかじかんでしまったら、手が冷たく痛くなり、とても辛いですよね。 手を擦ったり、ホットカイロを使ったり、色々な方法で手を温めようとすると思います。 そこでホットカイロよりも手軽で、かじかんだ手を温めてくれる、身近な魔法の言葉があります。 その魔法の力を持っている言葉が、H音です。 「はぁ〜」という息をかけることで、かじかんだ手に一気に温もりを与えてくれます。 H音は、下の付け根の周辺をほっこりと開け、気管から出てくる息を、ブレイクさせたり擦ったりせずに、 そのまま一気に口元に運ぶことで出す音です。 ”ぬくもり”もそのまま。 そのため、かじかんだ手を一気に温めることが出来るのです。 そしてH音は、音響効果はごく小さいのに、確かな物理効果も持っています。 かじかんだ手を温めたりすることとは逆になりますが、「Hu(ふ〜)」っと 塵を払ったり、熱いスープを冷ましたりしますね。 「Hu」は口の中を小さく使う母音「u」のおかげで、喉まで体温を温存してやってきた息の熱は、 喉や口内でぶつかり、ここに熱さを感じさせています。 喉や口内に熱を与えることによってエネルギーを消失した息は、 口元に出てきたときには、もう冷たいのです。 口元の息がクールなので顕在意識は気づきませんが、喉に直接熱が与えらています。 この”熱があったものを、冷ます”という物理効果の流れは、うっとうしいものを拭い去ったり、 熱いスープを冷ますイメージにもぴったりですね。 その他に、気管からの息を喉奥の大きな空洞でやんわりと包み込んで外に出す「Ho(ほ〜)」も、 口元の温度が高い音になります。 「ほっ」と一息つくと心が温まるという言葉もそのことから来ていることでしょう。 このように、H音は喉の開放感や息の温かさを伴う音なので、常にふんわりとした柔らかさを 感じさせる人間味が溢れる音なのです。 しかし、音響効果最小で物理効果最大のため、H音には、温かさプラス冷たさも持ち合わせる 不思議な力があり、ミステリアスな音でもあるのです。 |
|||||||
上級編 「サンタが街にやってくる」 語感ジャーナル第90号より |
|||||||
この季節、街や商店街は賑やかにクリスマスのイルミネーションで彩られます。 色のバリエーションもとても豊富で、本当にきれいですね。 私自身は、わりと「クリスマス」がピンとこない性質ですが、それでも子供のころは、 どれだけサンタクロースが待ち遠しかったことか… さて、今回は「サンタ」の語感を紐解いていきましょう。 「サンタ」といえば、”赤い服を着た恰幅のいいおじいさん”といったイメージが日本では定着していますが、 発音体感が導くイメージは、少し異なるのです。 「サ」の音は、とってもいいとこどり。 風が吹き抜ける疾走感があるのに、乾燥しすぎず少し湿り気を帯びているのでとても”爽やか”。 そして”滑らか”な印象もあります。それから母音のA音の開放感が、適度にリラックス感をもたらします。 続く、はずむように楽しい「ン」の音がエンターテインメント効果を高め、 生命力豊かな「タ」の音が、艶を添えて最後を締めます。 T音は舌の上の唾液をはがすようにして外に出すので、濡れていて粘性を感じさせ、 何かが積み重なっていく充実感もあります。 「温と冷」、「乾と湿」が絶妙なバランスで共存する「サンタ」の語感を例えるなら ”ふと、見上げた空から白い雪が舞い降りて、窓越しに、降り積もる様子を眺めながら ワクワクした気分で聖夜を待つ”といったイメージ。 おお、こんなにピュアな気分だったとは! ちなみに、パートナーの「トナカイ」は”気立ての優しい働き者”の語感! サンタクロースが重かろう?と、雪で寒かろうと頑張ってくれそうです。 |
|||||||
上級編 「年末のお買い物に成城石井」 語感ジャーナル第91号より |
|||||||
年賀状作成に大掃除にお正月のおせち料理づくり。 年の瀬は、やることが満載な時期でもありますね。 お歳暮やクリスマスの贈り物の購入が終わったと思ったら、お年玉やお年賀の準備に様々なもの の買出し。街は買い物客でにぎわいます。 年末のお買い物の中でも、訪れるだけでわくわくしてしまうお店のひとつに「成城石井」がありませんか? 高級品から舶来物の多種多様なバリエーションがそろっているようなイメージ。 実際に、少々お値段が張っても、「成城石井で売っているのだしまぁ、いいわよね」と 自分に言い聞かせてしまう女性陣も多いのではないでしょうか。 語感からみると、「成城石井」にはどのような印象が宿っているのでしょう。 まず、「せいじょー」からみてみますと、セは、舌の前方を、上の前歯の裏に寄せて、その隙間に 息の風を通します。このとき、口腔を低くして、舌を広く使うのですが、 これが遥かな空間に吹きわたる風を感じさせるのです。 遥かな世界観と颯爽と吹き抜ける風、謙虚なエ段音があいまって、いつまでも若々しく上品な印象が 立ち上がるのですね。 続くジョーは、口腔内いっぱいに舌が膨らみ、身体全体に響くような深い振動を感じさせます。 さらに、舌の中央にたまるつばがシズル感を想起させ、豊潤な印象も。 これが、バリエーションの豊富さや陳列棚の豊かさをイメージさせるのでしょう。 ちなみに、ジョは、口いっぱいに舌が膨らむ感じが、豊満さや豊かさを感じさせますので、 ハイソな印象も。ハイソながら、つばが口腔内をにぎやかにするので、人懐っこい印象も与えるのです。 こうしてみると、「セイジョー」は、若々しく上品で、ハイソながらも親しみやすい印象ですね。 豊富さまで感じさせてくれるとは、高級スーパーの名まえにもってこいです。 それに、「いしい」は、前向きで先進性がピカイチな音。 これが、舶来物の、先端を行く商品をそろえていそうなイメージを与えるのです。 さて、こんなにも、「成城石井」をベタボメしていいのでしょうか。 いや、それくらいネーミングとして素晴らしい、成城石井さんなのでした。 |
|||||||
☆語感ジャーナルの最新号は、こちらをご覧ください。→http://archive.mag2.com/0000227183/index.html |
|||||||
| はじめに 入門編 基礎編 中級編 特別講座編 上級編ページトップに戻る | |||||||
|
