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 中級編:会話に使われることば   はじめに  入門編  基礎編  特別講座編 上級編

 中級編 A音 「ありがとう」                       語感ジャーナル第33号より
 
 「ありがとう」「どうも」「すみません」「恐縮です」「サンキュー」など、御礼を表す言葉はいろいろ
 ありますね。

 このなかで、「ありがとう」は、母音が一番強く働く言葉です。先頭母音「あ」は、自然発生音で、発話者の
 意識が乗りやすく、息を擦ったり破裂させるなどの威嚇効果がないため、「心の素直な開示」を
 感じさせます。  

 このため、「ありがとう」は、最も心から言ってもらった感じがするのです。つい、照れくさくて、「どうも」と
 言ってしまったりしますが、やはり、「ありがとう」や「ありがとうございます」は、言っても、言われても
 気持ちのいい言葉ですよね。  

 母音は、心を開かせる魔法の音です。自然で素朴、明るく開放的な印象の母音A音は、自分の心にも
 周囲にも壁を作らない親しみのある音なのです。

 子供に「あのね」と言われたら「なあに?」と聞いてあげたくなりませんか?大人でも、話の切り出しに、
 「あのね」を使うと、相手が優しく受け入れてくれる可能性が高いです。ただし、相手をみて使ってくださいよ。  
 
 この「あ」始まりは、注意が必要なのです。あまりに親しげな印象のせいで、初対面の人や、仕事の
 関係の方には、心の中にずけずけと入ってくる無礼さを感じさせてしまいます。場によっては距離感の
 ある言葉をつかいましょう。  

 念のためですが、「ありがとう」は、無礼な感じはしませんから、どんどん使って大丈夫ですよ。
 心を込めた「ありがとう」は、言われれば、とてもうれしいですし、言うほうも幸せな気持ちになりますから。

 最後に、ちょっと古いですけど、世良正則さんの『あんたのバラード』は、「あんたに〜」のシャウトが
 印象的でした。この「あんた」が、自分の体の一部のような極親密な存在になっているというのを、
 語感からもよく表していて、泣けます。


 
 中級編 I 音 「いってきます、いってらっしゃい」             語感ジャーナル第34号より 

 朝、私たちは「いってきます」と言って家を出ます。母親は「いってらっしゃい」と送り出す。
 そうやって、朝は毎日紡がれてきました。

 ぴかぴかのランドセルを背負って、小学校に向かう日も。受験の日の朝、凍てつく冬空の下、緊張に
 上気した頬で家を飛び出すときも。社会人として、初めて会社に出社する朝も。    

 母音の中でも最も身体が前に出る音、「い」。舌の根元から中央に向かって、強い緊張感を作って出す
 音です。強い前向きの力をもつ音で、一途さや意志の強さを感じます。

 だから、緊張と不安でいっぱいで、外へ出ることに勇気がいるときに「いってきます」と発すると、
 自分の気持ちが前に出る。口が身体と気持ちを  牽引してくれるのですね。

 家で見送るひとは、「いってらっしゃい」と言って、その背中をさらに前へと押し出します。まるで、
 後ろ姿に向かって、振り返ることをさせない’応援の魔法’をかけるかのように。  

 行かなければいけないのに、躊躇してしまうとき。「いってきます」と口にしてみましょう。母音のもつ
 自然体のリラックス感と、「い」の発音体感がもつ前向きな姿勢が、あなたを自然と前へ進ませます。  

 営業へ出かける同僚がいたら、「いってらっしゃい」と元気に送り出してあげましょう。
 きっと、あなたのひとことで、潔く商談に臨めるはずですから。



 中級編 U音 「うれしい」も「うそ」も・・・                   語感ジャーナル第35号より
 
 職場や学校でなんとなくいいなぁと思っていた人から、何の気なしに話しかけられた話が
 弾んだ時。家族や親しい友人から誕生日を祝ってもらった。そんな時、心の底からこみ上げる
 喜びが生まれ、思わず「うれしい」といいたくなる事ってありますよね。  

 「う」音は声帯の響きだけで出す自然音で、舌をくぼませ、そこに力を集中させるようにして出す音。
 舌のくぼみに向かって強い受身の力が働きます。何かをしっかりと受け取り、内向して熟成させる
 イメージを作り出します。  

 この口腔内現象により、「う」のことばを発したときに、うちに溜めて熟成させたもの(ここでは心情)が、
 次のことば「れしい」によってにじみ出る。「う」はまさに、内で育ったものが生まれ出るような力を  
 持っています。「生まれる」ということば自体「う」の力が存分に活きてますね。  

 「うそ」の言い方もいろいろありますが、軽い言い方も、重い言い方もその人の気持ちが、スッと
 出たときに発することばです。特に恋人に問詰められたときに、グっと目を見つめられながら、「うそ」と
 言われた時は思わず目をそむけてしまいます・・・  

 「うれしい」も「うそ」。どちらも気持ちがにじみ出たことばです。ですからそれを投げかけられた相手へ
 の影響は抜群です。「う」の熟成 感がことばに偽りをなくし、「このひとは本心から思っているんだなぁ」  
 と受け取ります。    

 この「う」の効用を会話の中でうまく使えば、あなたのことばはさらに熟成し、ヴィンテージワインが
 深い味わいを広げるように、相手に深みのある印象を残すでしょう。


 
 
中級編 E音 「えーっ」と言わない                 語感ジャーナル第36号より

 突然忘れ物を思い出したとき。あなたは「あっ!」と言いませんか。 街中で同僚を見かけたときも、
 「あっ」と口からもれるかもしれませんよね。 これは、「あ」の音が、母音の自然発声音だからなのです。
 体中がリラックスを  したまま、自然と発してしまうのですね。  

 無意識のうちに口にしてしまうことばに、「え」の音もあてはまります。  
 恋人と待ち合わせをしていて、待ち合わせ時間を過ぎたころに「ごめん!急に仕事が入ったんだ。今日の
 デート、キャンセルして」と電話がかかってきたとしましょう
 「せっかく待ってたのに。メイクだってバッチリキメてきたのに!」という悔しく悲しい思いが溢れ、
 「えぇっ。そんなぁ」と電話の向こうの恋人に向かって叫ぶのではないでしょうか。  

 なぜ、ドタキャンを受けた彼女は「えーっ」ということばを彼にぶつけたのでしょうか。
 
 語感から見ると、発音する際の発音点は前の方にあるのに、舌の緊張点は奥にある。発音点は彼、
 緊張点は自分と言えます。つまり、とがめる対象からぐっと自分を遠ざけ、拒絶する意識を「えーっ」と
 発っしたときに表しているのです。    

 または、何か想定外の用事を頼まれたとき、無意識に「えーっ」なんて言っていませんか。この発言に
 よって、なんで私がやらなきゃいけないのよ!というあなたの心の内が丸はだかになっているのです。  

 なぜ、こんなシーンで「え」の音が自然発生的に口から溢れるのでしょうか。  
 それは、「え」と発音する際に、舌を平たくして、下奥に引き下げるようにして出しているからです。
 腰を引いて後ずさりをしている姿勢にそっくりなのですね。  

 だから、うっかり「えーっ」と言っていると、嫌がっているな、というのがバレバレなのですね。
 つい使ってしまわないようご注意を。    

 無意識のうちに使っていた、「えーっ」ということば。発せられるのにも、こんな原因があったのですね。  
 どちらにせよ、「えーっ」とは言わないことをおすすめします。  
 むしろ、言われないようにすることが、もっと大切だったりして。




 中級編 O音 「お大事に」                     語感ジャーナル第37号より
 
 寒くなってくると、学校でも、職場でも、風邪がはやります。かわいそうな風邪ひきさんに、
 「はやく帰れ!」と言いながら、送り出すとき、かけることばは、「お大事に」ですね。  

 薬局で薬をもらうときも「お大事に」と言われると、温かな気分になりますよね。病気で弱っている
 せいか、なんだか、とても優しくされたような気がするものです。この「お大事に」の「お」は、口腔内に
 大きな空間をつくり、反対に口は、小さくすぼめて、口の中の空気を包み込むようにして出す音。  

 このため、何かを大切に優しく包んだイメージをおこさせます。「お」をことばの始めにつけるのは、
 大切にしている気持ちの表れなのですね。「おかえりなさい」「おかげさまで」「おひさしぶり」など、
 相手を大切にしている気持ちが伝わります。  

 「おとうさん」「おかあさん」「お米」「お金」「お祝い」、大事なものには、「お」をつけたくなりますね。
 「お願い」も「お」抜きでは、人に何かを頼むのに適さない感じがします。「箸」なども「お箸」というと、
 上質な感じがしますね。     

 また、「お」の声帯音を大きな口腔内に響かせる振動は、周りの人と共鳴しあう音でもあります。
 この共鳴して共感を感じさせる「お」と、大切な上質感を思わせる「お」のイメージは、
 朝の挨拶「おはよう!」にぴったりですね。    

 毎朝、何気なく使っている「おはようございます」。この挨拶が、気持ちよく交わせたら、みんなで
 調子よく1日が過ごせる気分になるように考えられた先人の智恵の結晶なのかもしれません。



 
 中級編 K音
 「結婚してください」                語感ジャーナル第38号より

 ときめく恋愛真っただ中の女子たちが、こぞって憧れるプロポーズ。
 このことばを、いったいどれだけの切なる思いが待ち望んでいるのでしょう。  

 逆に、これを期待される男性側は、なんとも強い決意と決心を必要とするもの。独身時代の
 気ままな生活、自由な時間、好きなようにできたお金も、すべて家族を養うために費やされる。大きな
 責務を課せられるも同然ですよね。プロポーズの口火を切るのは、かなりな勇気がいるようです。

 「一緒になろう」でもなく、「嫁に来てくれ」でもなく、「Will you marry me ?」でももちろんない。
 プロポーズのことばと言えば、「結婚してください」があたり相場となっていますね。これはきっと、
 女性側も男性側も、もっとも胎に落ちることばだから。ここには、K音の威力が奏功しています。  

 「けっこん」の「けっ」は、舌の付け根のあたり、ちょうどのどちんこの辺をきゅっと硬くして出す音。 
 発するときの緊張感と窮屈な気持ちは、ことばにすでに表れていますね。男性側の、責務を課すことを
 自分に納得させる窮屈さ。目の前の女性を一生養わなければならないという重い決意。緊張は頂点に
 達するはずです。  

 一方、「けっこん」を約束される側の女性は、「けっこ」のしっかりとした発音体感に、男性による、自分の
 将来への固い決心と誓いを感じ、宙に浮くような幸せな気分になるのです。結婚は「けっこん」だから
 説得力があるわけで、「ふっこん」や「けっよん」だったら、「本当に私との将来を誓ってくれてるの??」
 という疑わしい気分になるはずですよね。  

 このように、「けっこん」には、相手との将来を約束し合う固い決意と絆を、確かなものにする魔法が
 あったのです。




 中級編 S音
 「さよならと、サイレントナイト」           語感ジャーナル第39号より

 別れのことばは、いろいろありますけど、心をしっとりさせる名曲に使われるのは、「さよなら」ですね。
 「さ」は、S音の風の音。その風は、勢いよく目の前のものを吹き飛ばし、息を吐ききれば、消えて
 しまいます。    

 大切な人と別れるときの「さよなら」は、ここにあったものが消えていく、そんな切なさが、「さよなら」の
 「さ」に感じられます。「せつない」もやっぱり、S音ですね。更に、「さびしい」もS音。    

 そして、早く離れたい人との別れも「さよなら」ですね。この場合の「さ」は、勢いよく、「サッサと」
 「サッパリ」別かれたい気持ち。  

 「そして」、「さらに」、「さて」、「しかし」も、話を先に進めることばですね。このS音は、自分で使うには
 調子がいいのですが、人に使うには危険なことばです。「さっさと、片付けなさい!」とか、「それで?」
 とか、言われると、急かされてるようで、嫌な気分になりますよね。  

 もっと嫌になっちゃうのが、「さぁ?」や「しらない」「失礼」などです。これでは、取り付くしまがありません。
 実体がない風の音ならではですね。しかも、息を歯にぶつけて音を出すので、威嚇している感じも
 します。「さっさと」といわれると、なぜか、強迫観念にとらわれるのは、このせいだったのですね。  

 さて、S音は消えてゆく音のイメージがありますが、日本語以外でも、「サウンド」「サイレント」「サイレン」
 など、音に関することばに、S音が使われています。  

 クリスマスソングの「サイレントナイト」は、『清しこの夜』ですが、直訳は、「静かな夜」。静寂な音のない
 「しずか」も、今まで流れていた音がぴたっと止まった、その刹那というときの「せつな」もS音なのですね。

 「サイレント」と「サイレン」は、静かなと、警笛の音という正反対です。英語のつづりは、silent と siren
 で、まるで、ヒアリングのテストに出てきそう。似ていて、全然違うところが、面白いですね。

 ちなみに、「サイレン」は、ギリシャ神話のセイレーンの意味もあります。船人を歌声で誘惑する、
 魅力的な美女の姿の海の精のこと。その歌声、どこからか聞こえてきて、人を狂わすとは、
 S音のマジックが効いています。



 
 中級編 T音
 「私たち、友達よね」               語感ジャーナル第40号より

 過去、こんなことを言われたことはないでしょうか。

 「私たち、友達よね」

 「ともだち」は、決して裏切ることのないあつい絆で結ばれた関係。何があっても揺らがない、
 その信頼感の上に成り立つ間柄ですね。

 その分、男女の会話シーンでこのフレーズが出てしまったら、ロマンスが生まれる隙やゆらぎを
 封じ込めてしまい、男女関係に発展する可能性の芽は、頭打ちとなるでしょう。  

 「と」で始まり、「ち」で終わる「ともだち」の語感。「と」と発するとき、上あごに舌を付け、密着点に
 強い息をぶつけて弾いて出します。舌が上あごにぺったりと着くことによって、確かさを感じさせ、
 同時に、唇はすぼめるのに口腔内に大きな空洞を作ることになるので、包み込まれるような信頼感、
 安定感を与えるのです。

 舌が弾く直前に膨張するところから、中身が詰まった確かな感じが一層想起されます。  
 つまり「と」は、確かでたっぷりとしていて、大きな信頼感をイメージさせる音なのですね。

 一方、「ち」は、「と」と同じように上あごにいったん舌をぺたりと密着させますが、舌を弾くときに、舌先の
 方で歯の裏に息をこすりつけるようにして発音します。そのとき、小さなところで唾が飛び散り、
 にぎやかな感じが加わります。「ち」は、にぎやかで、ちょっぴりキュートで元気な感じを想起させるのです。

 従って、そんな「ともだち」の語感は、揺るぎのないあつい信頼感と強く元気なにぎやかさをほうふつと
 させる音。相手の気持ちを勘ぐって一喜一憂したり、夜も眠れぬ思いになるような色恋沙汰の
 ミステリアスな関係には、少し不向きといえるでしょう。    

 そういえば、たちつてとの音には、確かで裏切らないイメージが色濃くついてはいないでしょうか。  
 「頼りにしているぞ」「たくましくなったな」「助けてください」「手伝います」などなど。舌をまるでおしりでも
 叩くかのように弾いて出す音であるT音は、激励の時や、自身を鼓舞するときに使うと、相手や自分を
 たきつけることができるのです。

 前に出る自信のないときにでも。
 T音の魔法を使ってみることをおすすめします。  




 中級編 N音
 「ねえ、ねえ」                   語感ジャーナル第41号より

 親しい人や、大切な人への呼びかけに、「ねえ、ねえ」は、よく使うことばですね。「ねえ、ねえ」と言われると、
 忙しいときでも、不思議と手を止めて、話を聞こうとしてしまいませんか?  

 N音は、上あごを熱く濡れた柔らかな舌で、優しくなでて出す音です。このため、N音のことばは、口にした人
 にも聞いた人にも、優しくなでられたような感じを与えるのです。まるで、優しいお姉さん(お兄さん)に
 甘やかされたような、懐かしく親密で少しセクシーなイメージです。頭をなでてもらったり、優しく包んで
 もらったり、という、なんとも心地よい感じをN音は、もっています。      

 安心して甘やかしてくれる印象のN音ですから、ちょっと甘えたいときに、使ってしまいますよね。
 「ねえ、ねえ」は、そんなかわいい甘えが許されるイメージのことばですね。  

 この優しい安らぎを感じさせてくれるN音ですが、一方で、人を支配する感じも持っています。「ね!」と念を
 押されると、思わず、「えっ..うん」と肯定してしまいますよね。「いや」と言えない感じなのです。    

 これは、発音時のぺったりと、上あごを覆いつくす舌が、人を支配する印象を作るから。「ね!」と発した人の
 思い通りにことが進むのは、そんな訳だったのですね。    

 親密な優しい印象で、弱いのかと思うと、以外に押しが強いN音。白黒ハッキリさせたくて詰め寄っても、
 「なんとなくね」「〜なんだよね」と言われてしまうと、なぜだかそれでもいいかと、諦めさせられてしまいます。  

 恋愛シーンでは、ケンカのときでも、その場にのほほんとした癒しの雰囲気を作ってくれるN音は重宝ですね。
 熱愛中のお2人は、N音の会話で益々仲良くなることでしょう。  

 さて、お仕事のとき、N音は不向きでしょうか? 「ねえ、ねえ」は、使いにくいですが、「なんとしてでも」
 「なにがなんでも」は、熱意が感じられてお仕事のシーンにピッタリですね。頼まれた無理な仕事も嫌がらず
 やりとげますよ、とアピールしているような感じも、なかなかの甘え上手で押しの強さが出ています。




 中級編 H音 「“はい”と“うん”の違い」              語感ジャーナル第43号より

  「はい」と「うん」。どちらも返事として使われる言葉です。目上の人との会話の中で、返事をする場合「はい」が
 一般的ですよね。これが友達や後輩との会話では「うん」が多用されます。では、それはなぜか?
 語感の発音体感から考えてみましょう。

 「はい」の「は」は舌の付け根をあけ、気管から出てくる息をこすったりブレイクしたりせず、そのまま一気に
 口元に運ぶので最速で発生する音です。「い」は相手にまっすぐに向かっていくような素直さを感じます。
 「い」に「は」がプラスされることで、素直さにスピード感と、高原の朝の冷たい空気のようなピンとした緊張感を
 与えます。

 これはいわれている相手からも心地よく、「こいつは俺の話をちゃんと聞いているな」という気持ちになり、素直
 さのアピールにつながります。目上の人とコミュニケーションをとっていくのに、欠かせないアイテムですね。

 一方、「う」は内に溜める体感イメージがあり、相手に聞いていることをアピールするというよりは、相手の
 意見を自分の中に消化させるという、返事の本来の作業のみですみます。

 この違いが「はい」と「うん」の使い方の違いを生み出しているのではないでしょうか。コミュニケーションを
 とるときは、相手と共感することが大切な要素になりますが、「はい」は相手の投げた言葉を、しっかりと受け
 止めたお知らせとして、最適ですね。

 もうひとつ気になるのが、H音は二文字目にくるものを強調するという点です。ことばによってですが、
 例えば、「はい」の「い」は「は」によってH音的要素を加えながらその特徴を伸ばしています。

 「はきはき」という言葉も、「き」の厳しく緊張感ある音に、「は」がスピード感を与え、緊張感の中に早さが
 加わり、躍動感が生まれています。

 この後ろの音の特徴を少し変えてしまうのも、H音の特徴です。




 中級編 M音 「ママ、ミッキー」                  語感ジャーナル第44号より

  今年は、ねずみ年。小さい子供でも、発音できる動物の名前。世界中で一番有名なねずみは。。。
 そう「ミッキー!」「ミニー!」

 「ママ、ミッキー!」と小さい時、言ったことはありませんか?
 ミッキーに会いたい。ミニーのぬいぐるみが欲しい。そんな時、ミッキーを指差し「ママ、ミッキー!」と。

  M音は、赤ちゃんが生まれてお母さんのおっぱいをくわえる時「〜んま」と出す音。 

 M音は柔らかく唇を閉じ、口腔内にゆるく息を満たし、唇を離すことによって発音します。音の基本は、
 鼻腔に響くハミングです。そのためM音を発音したときには、満ち足りた思いになり安心感と幸福感を
 与えてくれるのです。

 ミッキーマウスと発音したとき、M音の安心感・幸福感に母音のIの影響で親密感がプラスされ、
 みんなのアイドル「ミッキー!!」になるのです。世界中の赤ちゃんがM音で母親を呼んでいるため、
 幼児でも「ママ、ミッキー!」と発音しやすいのです。

 大人になった私たちは、普段どういう時にM音を発音しているのでしょう。
 「もう、嫌!」と物事に憤慨したときに、「まあまあ」となだめられて、「ま、いっか。」と許してしまったことは
 ありませんか?
 「もう○○」と怒られたとき、どこか許してもらえそうな懐の深さが感じられ、「まあまあ」と諭されれば、
 角を作らず許すことが出来ると思います。

 これは、まさにM音の効果です。M音を発音するときに、柔らかく合わせた唇は、そのまま柔らかさを
 脳に伝えるのです。ゆるく満たされた息は豊満なまろやかさを感じさせます。また、鼻腔を響かせることに
 よって、癒しの音にもなるのです。

 M音は、発音する人にも聞くあなたにも、強い安心感を与えます。
 それはずっとそばにいて見守っていてくれる信頼感なのです。


 
 中級編 Y音 「よせ、やめろ」                   語感ジャーナル第45号より
 
  喧嘩やもめ事の仲裁、何か行動しようとしている人を止める時。
 「やめろ」・「よせ」・「やめなさい」などのY音を使います。それは何故でしょうか?
 
 Y音は母音イの緊張を緩和して出す半母音。ヤはィア、ユはィウ、ヨはィオとほぼ同じ口の動きです。
 すなわちY音はあいまいさによって生み出される音なのです。
 
 母音イの突き刺すような体感イメージを、緩和するという働きがあるので、Y音を発音した人もことばを
 投げかけられた人も、さまざまな物を受け入れる柔軟さや、違う考え方にも寛大さを持てる空気感を
 作り出します。イの緊張を和らげるように発音するY音は、相手を包み込むようなやさしさにも満ちています。

 喧嘩をしている相手に向かって、例えばイ音のような突き刺すようなことばで静止しようとしても、
 言われた相手も攻撃されたと思い、仲介役も争いに巻きこまれ、三者三つ巴の戦いになってしまうかも
 しれません。Y音の寛大さとやさしさで、相手を受け入れる気持ちになってもらいましょう。 
 
 また、何かを行動しようと意思を固めた人に対して、バビブベボなどのB音のことばをかけても、
 相手を興奮させ余計に元気にしてしまうだけかもしれません。ここはY音のあいまいさとやんわり感で、
 相手に一息ついてもらい、意思をあいまいにするのが得策です。

 あいまいさ、そこから生まれるやさしさはY音最大の特徴だと思います。あいまいさ・やさしさは人間社会に
 とっての潤滑油のような役割も果たしています。とても大切なものです。

 しかし、あいまいさとやさしさに溺れすぎる事も危険です。一時はY音を忘れ、はっきりしたものを
 積み上げていく事も大切です。Y音を使いこなし、優雅で実のある人生を楽しんでいきたいですね。


 
 中級編 R音
 「了解!」                      語感ジャーナル第46号より

 なにかを依頼したとき、相手が「了解しました。」とか「了解!」と、言ってくれると、
 しっかりと処理してくれそうで、安心しますね。
 
 これは、理性を感じさせる子音の効果です。漢語や英語の単語は、子音を強く感じさせます。
 このため、会話に使うと、自分の都合や、感情をあらわさずに、理性的に行動してくれる印象があるのです。

 また、R/L音は、舌を最も技巧的に使って発音するため、人工的な印象があり、人間味の対極にあるような
 合理性を感じさせます。
 「論理」「理屈」「ルール」「ロウ」「ロゴス」など、規則や決まり事のことばに使われていますね。

 「了解」は、理性を感じさせる上、合理性も感じさせることばということになります。
 「迅速、的確に達成します!」と言っているような感じなのですね。
 
 そのほかのR/L音も見てみましょう。
 「埒が明かない」の「らち」は、物事の区切りや限界を表し、「ろくでもない」の「ろく」は、あるべき状態を表して
 います。このように、人の決めた基準に関することばに使われていますね。

 最近では、あまり聞かなくなったような気がしますが、「れっきとした人物だ」などと言うときの、
 「れっきとした」も、確かなものとして世間から認められているということ。

 こんなに、人工的で合理的な印象のR/L音ですが、「ルンルン」「ランラン」は、ルールとは無縁な、
 とても楽しげな感じがします。これは、R/L音を出す時の、舌を花びらのように丸めて、それをひらりと
 ひっくり返す動きが、華麗で、扇情的な印象も作るためです。
 
 「ルンルン」「ランラン」は、「ん」を繰り返し使って、楽しいリズムを作るため、扇情的な感じが増幅しています。
 おもいっきり楽しい感じがするわけです。
 
 しかし、楽しさも行き過ぎると、まるで少女漫画のヒロインの台詞のようなどこか作られた、現実味のない
 感じがしてきます。やはり、R/L音は、人工的な感じをさせてしまう音なのですね。




 中級編 W音
 「若いって、いいわよね」                語感ジャーナル第47号より
 
 「若いって、いいわよね〜」
 こんなことを、よく言っていませんか? もしくは、よく言われている立場かも。

 「わかい」の「わ」は、むくむくと実体が膨張していく様子を表現しています。  

 まさに、今は青い若葉や若者が、これからどんどんと成長していく将来性を、
  この膨張感が表しているのですね。
 
 ではこれを発音体感で掘り下げてみましょう。
 「わ」を発音する際には、いったん唇をすぼめて内向する「ウ」と言ったあとに、口を大きく開けて最も解放する
 「ア」へ向かいます。「ウ」から「ア」への劇的な変化で出す音なので、実体があいまいになり、一気に膨張する
 感じがあるのです。
 それはまるで、夏の日の入道雲のよう。もくもく、むくむくと増幅していく印象を与えるのですね。

 つまりこれが、「わかい」ということばに、その成長していく将来性を
 感じさせる原因だったのです。

 そこで、冒頭の「若いって、いいわよね〜」というセリフ。
 よく口にする方の立場だったら、うぶで未知の可能性にあふれた対象者の中に、発展の種を見いだして
 そうつぶやくのでしょう。

 一方、あなたがこのセリフをよく言われる方の立場だったら、何だか大げさだな、どうして“いい”のかな、
 などのことばとのギャップを感じるのではないでしょうか。

 それもそのはず、「わ」は、実体にプラスアルファのボリュームを感じさせる音。
 けっこう、大げさに聞こえるのです。

 だから、歳を重ねて働き盛りの年齢になってきたときに、新卒で入った新入社員の女性に
 「若い子と一緒にお酒が飲めて、おじさんうれしいな♪」なんて言わないようにしてくださいね。
 「なんだか大げさ、この人」と思われて引かれてしまいますので、要注意です。




 中級編 G音
 「がんばります!」                  語感ジャーナル第48号より
 
  挨拶や、スピーチ、またはメールなどでも、「がんばります!」と、 言ったり、書いたりしますよね。
 人によっては、必ず言う定番フレーズの場合もある、とても良く使うことばです。
 
 「がんばります!」は、やる気まんまんの気持ちで言うときばかりではなく、
 やりたくないけど、どうしてもやらなきゃいけないときにも使いますね。
 
 では、人から、「がんばろう!」と言われると、どうでしょう?

 一緒になって、「がんばるぞー!」と思えるときと、「えっ、私は無理。あなたが、がんばって。」と心の中で、
 つい、つぶやいてしまうときがありませんか?
 
 これは、先頭音「が」のG音の発音体感が影響しています。
 喉の入り口という、くっつきにくいところを、あえてグッと力を入れてくっつけ、そこを突き破るように、
 息をぶつけて振動させて出すG音。

 あえて、そんな難しいことをするという決意と、挑戦する楽しさが、積極的に「がんばろー!」と
 言うときの気持ちと連動しています。
 「げんき」や「ぐんぐん」も、楽しさの感じられることばですね。

 また、喉もとをグッと締め上げるようにして出す音ですから、自然と「まいった」という気持ちをおこさせ、
 G音のことばを、凄みのある偉大な存在と感じさせます。 
 「ガン(眼)をつける」「ゲキリン(逆鱗)」「ゲキカラ(激辛)」など、凄みを感じさせますね。
 
 このため、「がんばろう。」言われると、圧倒的な力に押されるようで、つい、拒絶したくなるのですが、
 やっぱり、その力に負けて、従ってしまうのです。
 
 そして、「がんばるしかない」という、どうしようもない状況も、G音を発音してみることで、
 自らを鼓舞することになるのです。 
 
 思い切って、「がんばります!」と言うとき、はじめは、カラ元気かもしれ
 ませんが、自分の発したことばが、自分を従わせてしまうものなんですね。



 中級編 Z/J音
 「実家に帰らせていただきます」           語感ジャーナル第49号より
 
 どうも、Z/J音の世界は、凄みと恐ろしさを感じさせるようです。
 
 夫婦の会話によく登場する「実家に帰らせていただきます」という台詞。
 他を寄せ付けない発話者の意気込みとおぞましいほどの執念が「じ」によってよく表れていますよね。
 
 これがもし、「元の家に帰らせていただきます」だったり、「山梨のうちに帰らせていただきます」だったり
 したら、「実家」ほどの凄みは感じないのではないでしょうか。
 「実家に帰らせていただきます」だからこそ、一種の”強迫”として奏功するのです。

 ではなぜ、「じ」にそれ程の効果があるのでしょうか。
 「じ」は、前歯の付け根に息をぶつけ、乱気流を起こして出す音です。その際、舌の脇にテンションを加えて
 膨らませます。低く振動し、口いっぱいに舌が膨らみ、身体全体に響くような深い振動を感じるため、
 あまねく低く制する感じがあるのです。

 だから、「実家」と言われたときに、心臓を制圧された感じがして、おぞましさを感じるのですね。

 ざ、ず、ぜ、ぞ音も同じように、乱気流を起こして出す音です。
 舌全体を膨らませて出すので、オカルト的効果が存分にある音なのです。
 
 「絶対にイヤ」「私たち、ずーっと一緒よね」「ざまぁみろ!」など、
 ざ、ず、ぜ、ぞ音が使われる会話を取り上げてみても
 そこから匂い立つ恐ろしさにこころを締め付けられずにはいられません。




 中級編 D音
 「どんだけ〜」                      語感ジャーナル第50号より

 2007年流行語大賞のトップテンにもなったこのフレーズ。
 皆さんご存知ですよね。そう、メイクアップアーティストのIKKOさんの持ちネタ。
 「どんだけ〜」を使うようになったのは、あるトーク番組がきっかけだそうです(以前テレビで仰ってました)。
 番組の中で自分がツッコミを入れられて、うまく返せず困った時に、このフレーズが出てきたとのこと。

 元々は、一部の女子高生や新宿2丁目付近のゲイの方の間で使われていたそうです。
 では何故、以前からあるこのフレーズが流行語大賞のトップテンになったのでしょう。
 理由は二つあると思います。

 ダ行のなかにはジとヅがありますが、これは発音体感的には別のことば、D音に相当するのが、
 柔らかな停滞音「だ」「で」「ど」です。
 「だ」「で」「ど」は、唇をだらりと垂れ下がるように開け、口角から息を漏らしつつ、舌を膨らませて、
 厚く振動させる音。舌の付け根の緊張感を弱めると、鼻腔に甘く音がこもります。停滞と甘さを感じさせる、
 柔らかい濁音です。
 
 「どんだけ〜」のなかの「ど」と「だ」のちから。
 停滞してこもる「ど」は、ちょっとやそっとじゃ揺るがない大物感を醸し出し、まさに威風堂々としています。
 また、口腔部を上げながら、重々しい存在感を出す「だ」の発音体感は、王者の風格を持っています。

 メイクアップアーティストとして、不動の地位を確立し、自分の生き方を堂々と表現してきた人。
 実力が伴って、はじめてにじみ出る重量感のある存在、そんなIKKOさんが使ったからこそ、
 「どんだけ〜」ということばの語感とキャラクターがしっくりきて、世間にも認知されたのかもしれません。

 もし、これがキャラクターが変わってて面白いというだけの人が使っていたら、流行語大賞にノミネート
 されるまではいかなかったと思います。

 もう一つの理由として、会話の合いの手に使われるD音(でも、だって)のことばですが、存在感があり話を
 一転させる力がありますが、全体に停滞イメージの強く否定感があるので、あまり気持ちいい役目を担って
 いません。しかし、「どんだけ〜」の一言は、相手を肯定しながらも、自分の存在感を示せ、会話に緩急を
 つけられます。

 会話のなかでいいフレーズが思い浮かばないときに重宝できる一言です。
 でもそのまま使うと、ちょっと古いかも。ことばはナマモノなので自分なりのアレンジをして活かして下さい。




 中級編 B/P音
 「バンバンいこう!」                 語感ジャーナル第51号より

 「バンバンいこう!」「はい、パ〜っといきましょう!」と、こんな会話は、仕事がうまくいったときの
 打ち上げなどでよく聞かれます。ご機嫌で、景気のいい感じがしますね。

 「バンバン」「バリバリ」「ビンビン」「ブイブイ」「ブンブン」B音はじまりのことばには、パワフルで、
 元気のよすぎるような状態を表す擬態語が多いですね。
 「パ〜っと」「ピンピン」「ポンポン」と、P音もパワフルで元気な感じがすることばに使われています。
 
 B/P音は唇を接着し、その接着点を息で破裂させて出す音。唇を破裂するようにはじくので、
 唾が飛び散り、にぎやかさと、強く前向きなアグレッシブさを感じさせます。このため、パワフルで、
 元気なイメージがでるのですね。

 唇を振動させて発音するB/P音は、人からも唇の震えが見えるため、露出度が高く、ゴージャスで
 エッチな印象があります。

 また、「ぷ〜、ぶ〜、ば〜」などの音は、赤ちゃんがご機嫌な時に出す音ですね。B/P音は、
 楽しい唇の刺激音でもあるのです。この唇への刺激は、食へのイメージにつながり、成長、繁栄、
 繁殖など、どんどん増えていく印象も、もたらします。  

 このように、B/P音は、食と性をイメージさせるグラマラスな音。
 快楽を刺激するような語感です。いきいきと生命力にあふれる魅力のある音ですから、楽しさが
 膨らんでいくような気分の時に使いたくなるわけです。

 こんなに楽しいB/P音ですが、ときと場合によっては、人を嫌な気分にさせてしまいます。

 「バカ」「ブス」なども、発音して楽しいことばですが、こちらは、度が過ぎる感じですね。
 言われたほうは、力強い威嚇の振動音に押されて、ムカついたり、ぐったりしてしまいますから、
 注意してお使いください。

 ほかにも、「不作法」「無頼漢」と、行き過ぎな悪いイメージのことばも、B音にはピッタリあっています。
 「万死(バンシ)」などという言葉も、かなり意味を語感が強めて、いやな感じがしますね。



 
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